高血圧の方は勃起不全(ED;Erectile dysfunction)になりやすいことが、世界中の様々な研究から明らかになっています。
フランス
フランスの研究(Urology. 2004;64(6):1196–1201. )では高血圧患者3906人(平均約58歳)では、67%がED(IIEF-5<21)でした。
米国
日本
本邦においても概ね同様です。
企業の従業員とその親を対象とした研究(n=1517)( Int J Urol. 2001;8(2):53–59. Int J Urol. 2001;8(2):53–59.)でも高血圧はEDの有意なリスク因子(OR2.79)でした。
また、一般診療所に通院する生活習慣病患者を対象にした研究(n=6,112) (Circ J 2003; 67: 656 – 659)でも高血圧はEDの有意なリスク因子(OR1.79)でした。
つまり、高血圧の人はEDに罹患しやすいということが日本のデータでも言えるのです。
メタ解析
複数の研究を統合して解析するメタ解析。エビデンスレベルは高いとされます。
EDの人は高血圧を来たしやすい?
高血圧の人がEDを合併しやすいということはわかりました。
それでは、EDの人はどのくらい高血圧を来たしやすいのでしょうか?
米国マネージドケアのデータを解析した研究( J Urol. 2005;174(1):244–248. )によるとEDのない 患者1584,230人では19.2%が高血圧を合併していましたが、ED 患者285,436名では41.2%に高血圧を合併していました。 ED 患者は高血圧を有する確率が高く、それは年齢や並存疾患などの背景因子を補正しても有意(OR1.383)でした。
EDを主訴に受診した患者の18%に未診断の高血圧が潜在していたというデータもあります。
EDの人は血圧測定をした方が良さそうです。
高血圧はなぜEDを来たしやすいのか?
高血圧は動脈硬化をきたしますので、中枢の太い血管も末梢の微細な血管も弛緩する能力が低下し、血管抵抗が上昇します。陰茎(ペニス)は、特殊な血管組織とみなせるような器官です。血管に富んでいます。陰茎の血管にも同様の変化を来たし、血管抵抗が高くなり、動脈に血流が流入しづらくなります。
また、高血圧は血管の内皮機能障害を引き起こします(血管の内側が痛む)。これにより内皮から分泌される物質(一酸化窒素(NO)など)の作用が不十分になり、血管拡張が障害される、つまり血流入りづらくなるのです。( Int J Impot Res. 2018;30(3):141–146)
高血圧に潜在するED、その診療の問題点
このように、高血圧の人はEDを来たしやすいです。
日本には高血圧の人は約4000万人いると推定されています。
「高血圧治療ガイドライン2019」にはEDの記載はほとんどありません。
頻度が高いにも関わらず医師サイドはあまり関心がないことが伺えます。
高血圧とEDの密接な関係を知らない医師も少なくありません。
一方で、患者さんとしても、なかなか内科外来では医師に相談しづらいですし、慌ただしい内科外来では相談する間もありません。
高血圧の方は、心臓病や血管疾患が潜在している可能性もあります。気軽にインターネットや繁華街のED専門クリニックでED薬を購入、使用することが身体的安全において問題があることがしばしば生じます。
本来は、血圧を管理し、心臓病や血管疾患の潜在や程度を十分把握した上でED治療薬などを検討することが理想です。
まとめ
高血圧の方は ED を併発する確率が高く(おおよそ60%くらい)、さらに重症化しやすいと考えられます。
当クリニックでは、EDの相談に積極的に対応しています。血圧や、心血管疾患の評価、管理も合わせて行います。ぜひお気軽にご相談ください。
また、EDの人は高血圧が潜在している可能性が相対的に高いです。時々、血圧測定をしてみましょう。高いかな?と感じたら、一度ご相談ください。