新型コロナウイルス感染(COVID-19)で心臓も悪くなる?

投稿日: カテゴリー: 医療一般循環器

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新型コロナウイルスはご存知のように肺炎を起こしやすく、呼吸機能悪化を呈することが多い点が特徴の1つです。

初期症状は発熱、咳、倦怠感など通常の風邪と区別がつきません。8割方そのまま自然改善してしまいますが、肺炎になりそれが重症化すると、急性呼吸促迫症候群という病態が生じたり、多臓器不全に陥ったり、命が脅かされることになりやすい点が通常の風邪と異なるところです。

 

新型コロナで心臓も悪化


そして多くの患者さんを分析することで、肺のみならず、心臓にも影響を与えることが分かってきました。

新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)の経過中に心筋が障害される人は重症な人が多く、予後が悪い傾向があるのです。

いくつか報告を挙げてみます。

 

・COVID-19患者41人を対象とした報告では、5人(12%)の患者が心筋マーカー(心臓が障害されると上昇する指標)が上昇し、この5人のうち4人が集中治療室に入院しました。(Lancet, 2020,395(10223):497-506)
・COVID-19の患者(医療従事者)30人を対象とした報告では、5人(16.7%)が心筋障害を呈していました。(Zhonghua Jie He He Hu Xi Za Zhi. 2020;43:E016.)
・COVID-19患者138人を対象とした報告では、10人(7.2%)が心筋障害を生じ、そのうち8人は重症で集中治療室に入院しました。合併症がより多く発生しました。
(JAMA. 2020;10.1001/jama.2020.1585.)
・COVID-19患者1,099人の多施設研究では、心筋マーカーは重症患者でより高く上昇し、予後とも関連していることがを示されました。(N Engl Med,2020[2020-02-28])

 

不整脈や不整脈を疑うような症状を訴える報告もあります。

 

・COVID-19患者138人を対象とした報告では、23人(16.7%)の患者で不整脈が生じ、そのうち16人が集中治療室に入院しました。(JAMA. 2020;10.1001/jama.2020.1585.)
・COVID-19患者137人を対象とした報告では、10人(7.3%)の患者の最初の症状は「動悸」でした(Chin Med J (Engl). 2020;10.1097/CM9.0000000000000744.)

・COVID-19患者99人を対象とした報告では、2020年1月25日の時点で11人(11%)が死亡しました。そのうちの1人の心臓病の既往歴のない患者(喫煙歴はある)は2019-nCovに感染ののち重度の心不全を発生し、最終的に心臓突然死をきたしました( Lancet, 2020,395(10223):507-513)

 

 

ざっくりまとめると、

・COVID-19患者の10%くらいで心臓が障害される
・その人たちの重症化率は高い

 

 

なぜ、新型コロナで心臓が障害されるのか?


なぜ、COVID-19により心臓が障害されるのでしょうか。
まだわかっていませんが、いくつか可能性が考えられています。(Zhonghua Xin Xue Guan Bing Za Zhi. 2020;48(0):E006)
① 新型コロナウイルス が直接心筋に入り炎症を起こす(ウイルス性心筋炎)
同じコロナウイルス であるMERS-CoV感染ではウイルス性心筋炎を引き起こすことがあると報告されています。
② 重症肺炎による低酸素血症や、循環動態不良による二次的な心筋酸素供給の低下
つまり、肺炎により心臓へ十分な酸素を供給できないということです。
③ サイトカインストームの影響
サイトカインとは炎症や免疫などに関係するタンパク質、生理活性物質群であり、サイトカインストームとは、それらが過剰に働く病的状態のことです。
ちょっと、難しいですね。
ウイルスそのものが心臓を侵す可能性もありますし、単に全身的に重症化することで二次的に心臓に負担がかかっていく可能性もあります。そして、その両方が同時に起こることもあるでしょう。

心臓に持病があると死亡率が高い


機序はどうであれ、心臓に悪影響が及ぶことで病状はさらに悪化しますし、
もともと心臓に持病がある人がCOVID-19に罹患すると、それに耐えきれずに死に至りやすくなるということです。
実際に、心臓に持病がある人が、COVID-19に罹患した時の死亡率は13.2%で、他の持病よりも高いことが示されています。
<持病のある患者の致死率>(WHO)

・循環器疾患(心臓病) 13.2%

・糖尿病 9.2%

・高血圧 8.4%

・呼吸器疾患 8.0%

・がん 7.6%

ちなみに、この時点での患者全体の致死率は3.8%でした。

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新型コロナウイルス感染が心配なら、呼吸と心臓のチェック


新型コロナウイルスは、ざっくりというと8割の人にとっては「ただの風邪」です。
発熱や、咳や、倦怠感が出ても自宅で寝ていればだいたい治るのです。

(コロナだろうが、ただの風邪だろうが、調子悪い時は出勤や外出はせず自宅で寝てましょう)

 

もし発熱や、咳や、倦怠感が出て、新型コロナウイルス感染がご心配な方は、

(持病のない若い人は4日、高齢者や持病のある方は2日は様子を見た上で)

とりあえず医療機関で呼吸状態と心臓のチェックをすると良いと思っています。

精度の高くないPCR検査にこだわるよりも本質的です。

ただし、呼吸と心臓のチェックの確たる方法はまだはっきりしていません。結局は複数の情報(経過や身体所見などの臨床所見、レントゲンや採血、心電図、超音波など)からの総合的な判断になります。

 

呼吸と心臓に大きな問題がなければ切迫する危険はありませんので、まずはご自宅で休んで経過を見ていれば良いと思います。
だいたい、自然に治ります。もし悪化傾向を呈するなら、呼吸と心臓の再チェックです。
ご心配の方はご相談ください。

 

なお、通常の診療所ではPCR検査は施行できません。

PCR検査は絶対的な検査でもありません。本当に検査が必要な人は、少ないです。

 

【参考】

・Wei ZY, Qian HY. Zhonghua Xin Xue Guan Bing Za Zhi. 2020;48(0):E006. doi:10.3760/cma.j.issn.cn112148-20200220-00106

・Tan ZC, Fu LH, Wang DD, Hong K. Zhonghua Xin Xue Guan Bing Za Zhi. 2020;48(0):E005. doi:10.3760/cma.j.issn.cn112148-20200213-00077