低用量PDE5阻害薬1日1回内服は全男性必須かもしれない

投稿日: カテゴリー: メンズヘルス

たかがED、されどED。人には言えないけれど、多くの男性が悩む問題でもあります。

男性にとって勃起力の低下は単に肉体的な問題のみならず、心理的にも悪影響を及ぼし、ウェルビーイングを著しく低下させます。この問題の解決はウェルビーイング向上の1つの手段なわけです。

 

ED(勃起不全)の治療薬「PDE5阻害薬」


勃起不全の薬物治療といえばバイアグラをはじめとするPDE5阻害薬というカテゴリーの薬です。

ごくごく簡単に言うと、血管が拡張し血流が向上する薬です。

日本で流通している主なものは以下の3種類です。

 

通常、どの製剤も「on-demand」という内服の仕方をします。必要な時に頓服する、つまり性行為の1時間前ほどに内服する方法です。便利といえば便利ですし、だからこそ今なおそのような内服方法が主流なのですが、問題点もあります。

例えば、性行為の挿入タイミングから逆算して概ねちょうど良い内服時間を考慮しないといけません。空腹時と食後では効き方が変わる製剤もありますので考慮しなくてはいけません。うっかり飲み忘れたらもっと最悪です。

 

「on-demand」でなく「低用量1日1回内服」


「on-demand」でなく「低用量1日1回内服」する方法があります。つまり、毎朝1回内服という、いわゆる普通のお薬の内服のように服用するわけです。「daily dose」「Once-a-Day」「Low-dose Long-term dose」「chronic low dosing」などと表現されています。それに適した薬物動態を示すものがシアリス(タダラフィル tadarafil)です。有効血中濃度の持続時間が36時間と大変長いのです。

性行為のタイミングを考慮することなく、普通に朝などの食後に内服していれば良いのです。

 

「低用量1日1回内服」のEDヘの効果


tadarafilは「on-demand」では10-20mg/回内服することが一般的ですが、「低用量1日1回内服」では5mg/日でも概ね同等の効果が期待できます。

 

・tadarafilの「on-demand」と「低用量1日1回内服」を比較したRCT(無作為化比較試験)のメタ解析で、4つの研究、1035人を対象とした論文です。結論的には、「低用量1日1回内服」がEDヘの有効性で優れており、また副作用も少なかったとしています。( Sex Med. 2019;7(3):282–291)

・同様のRCTのメタ解析で、6つの研究、1534人を対象とした論文もあります。この論文ではtadarafilの「on-demand」と「低用量1日1回内服」は双方ともにEDに有効であり、安全であり、2群に有意差は認めませんでした。( Urol Int. 2017;99(3):343–352. )

 

朝立ちは男性のポジティブ感情を増幅させる


定時内服しているということは、性行為以外の時間帯にも効果が見られるということにもなります。だからと言って、1日中勃起しているとか、そんなことではありません。

例えば、朝に勃起することは生理的には正常で健康的な現象ですが、勃起力が弱くなると朝立ちも当然見られなくなります。ところが、「低用量1日1回内服」していることで朝立ちもしやすくなります。

女性にとっては、馬鹿馬鹿しいという感じかもしれませんが、朝立ちは男性にとって地味に重要です。

ある研究では、tadarafilを内服している45才以上の男性の99%で朝立ちを経験し、半数以上が”男としての自信が持てる!”と感じ、“生まれ変わったようだ!”と感じた人さえもいました。(Asian J Androl. 2006;8(6):703–708

 

勃起不全の改善に加え、早漏軽減の効果もあります。( Urol Int. 2017;98(2):210–214)

 

「低用量1日1回内服」の前立腺肥大症症状への効果


「低用量1日1回内服」の前立腺肥大症症状への効果も確認されています。

・tadarafilの「低用量1日1回内服」とプラセボを比較した13のRCT、3973人を対象とした系統的レビュー、メタ解析で、tadarafil5 mg1日1回内服は前立腺肥大症を示唆する下部尿路症状を有意に改善し、またEDにも有効でした。( Low Urin Tract Symptoms. 2018;10(1):84–92. )

 

日本でもtadarafilは前立腺肥大症の治療薬として保険適用され「ザルティア」という商品名で販売されています。EDの保険適用はありません。あくまでも前立腺肥大症です。前立腺肥大症とEDを両方有している方にとっては、まさに1粒で2度美味しい薬ということになります。

 

 

動脈硬化予防も期待できる可能性


日本発の興味深い研究もあります。動脈硬化の指標の1つの脈波伝播速度(PWV)という項目があります。下部尿路症状のある患者85人が対象です。そのうち心血管疾患のリスクの高い人がtadarafil5 mg1日1回内服することより、PWVが改善したとのことです。( Urol Sci 2019;30:164-9.)

 

 

その他、期待される様々な効果


PDE5阻害薬の低用量内服、長期内服の効果を系統的にレビューした論文があります(Sex Med Rev. 2016;4(3):270–284)。まだ完全には確立されていないものも含まれはするものの、期待できる効果や改善が期待できる因子、病態として以下のものが挙げられています。

【性関連】

  1. 勃起不全(ED)
  2. 性的QOL
  3. 他のPDE5阻害薬との併用
  4. EDによるセックスレス
  5. 心理的ED
  6. PDE5阻害薬の副作用軽減
  7. 射精不能症
  8. 骨髄移植後のED
  9. 女性の性機能不全
  10. 再発性持続勃起症
  11. 朝立ち

【泌尿器関連】

  1. 前立腺肥大症
  2. 前立腺手術後などの陰茎リハビリ
  3. 前立腺小線源療法後のED
  4. 精巣捻転(による組織障害)
  5. 慢性腎障害
  6. 卵巣捻転(による組織障害)
  7. 間質性膀胱炎
  8. ペロニー病(陰茎硬化症)

【心臓血管関連】

  1. 心不全
  2. 先天性心疾患による肺高血圧症
  3. 心臓保護
  4. 血流依存性血管拡張反応(FMD)(血管内皮機能)
  5. 同所性心臓移植(Orthotopic Heart Transplantation)
  6.  同種移植片血管症(Allograft Vasculopathy)

【肺関連】

  1. 肺高血圧症
  2. アイゼンメンジャー症候群

【皮膚関連】

  1. レイノー現象
  2. 手指潰瘍
  3. 手掌足底感覚異常症
  4. びまん皮膚硬化型全身性強皮症
  5. 創傷治癒
  6. 褥瘡
  7. 皮弁生着率

【消化器関連】

  1. 食道痙攣
  2. 慢性裂肛
  3. 先天性横隔膜ヘルニア
  4. 肝臓再生促進

【生殖関連】

  1. 子宮血流向上、子宮内膜肥厚
  2.  反復性流産
  3. 卵巣反応不良
  4. 精子機能

【神経関連】

  1. 末梢神経障害
  2. 認知機能
  3. 肝性脳症
  4. 鎮痛効果

人間の様々な器官に様々な好影響を与える可能性があります。単なるEDの薬というわけではないのです。

 

まとめ


PDE5阻害薬の「低用量1日1回内服」はED治療に有効で、安全です。早漏にも有効です。定時内服することで、性行為前の内服タイミングや、食事との関連などに気を使わずに済みます。それに加え、朝立ちの頻度も増えて、ポジティブ感情が増えますし、また動脈硬化予防や、血管拡張、血流改善による全身的な様々な効果も合わせて期待できてしまいます。一種の若返りの薬、anti-aging drugと言っても良いかもしれません。

全ての男性がルーチンで内服しても良いくらいです。

実際に、男性泌尿器科医の中ではこの薬を内服している人がとても多いと、先日泌尿器科医に伺いました。

具体的には、tadarafil 5mgを1日1回から始めると良いと思います。

 

前立腺肥大症のある方は、ザルティアの保険適応がありますのでさらにお得です。

(前立腺肥大症のない方は、保険適応外ですので自費になります。)

 

当クリニックでも処方可能です。お値段はこちらでご確認ください。

 

ED外来

 

【参考文献】

・Zhou Z, Chen H, Wu J, et al. Meta-Analysis of the Long-Term Efficacy and Tolerance of Tadalafil Daily Compared With Tadalafil On-Demand in Treating Men With Erectile Dysfunction. Sex Med. 2019;7(3):282–291. doi:10.1016/j.esxm.2019.06.006

・Peng Z, Yang L, Dong Q, Wei Q, Liu L, Yang B. Efficacy and Safety of Tadalafil Once-a-Day versus Tadalafil On-Demand in Patients with Erectile Dysfunction: A Systematic Review and Meta-Analyses. Urol Int. 2017;99(3):343–352. doi:10.1159/000477496

Kim SC. Regaining of morning erection and sexual confidence in patients with erectile dysfunction. Asian J Androl. 2006;8(6):703–708. doi:10.1111/j.1745-7262.2006.00216.x

・Ozcan L, Polat EC, Onen E, et al. Effects of Tadalafil 5 mg Dosed Once Daily in Men with Premature Ejaculation. Urol Int. 2017;98(2):210–214. doi:10.1159/000445839

・Wang Y, Bao Y, Liu J, Duan L, Cui Y. Tadalafil 5 mg Once Daily Improves Lower Urinary Tract Symptoms and Erectile Dysfunction: A Systematic Review and Meta-analysis. Low Urin Tract Symptoms. 2018;10(1):84–92. doi:10.1111/luts.12144

・Hayashi K, Sasaki H, Fukagai T, Noguchi T, Hirayama K, Ogawa Y, et al. Effect of long-term administration of tadalafil on arteriosclerosis: A prospective cohort study. Urol Sci 2019;30:164-9.

・Mostafa T. Useful Implications of Low-dose Long-term Use of PDE-5 Inhibitors. Sex Med Rev. 2016;4(3):270–284. doi:10.1016/j.sxmr.2015.12.005

 

低用量PDE5阻害薬1日1回内服は全男性必須かもしれない” への3件のフィードバック

  1. 肺癌治療対策として、8年前からタダラフィル5mgとEGCGを毎日摂取し続けています。体調は良好で推移しており素晴らしい論調その通りだと思います。癌及びcovid19との関係性も知りたいです。

    1. 黒田肇様、コメントありがとうございます。タダラフィルが血流改善により肺の繊維化に抑制的に働く可能性はあるかもしれませんがまだエビデンスはありません。
      参考→ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7308240/
      がんに関しては、抗癌剤とタダラフィルの併用による効果を期待するような研究や、
      参考→ https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/clinical-trials/intervention/tadalafil
      タダラフィル内服と大腸癌リスク低下の関連を示した疫学研究があったりします。(癌予防効果とは言えません)
      https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32568473/

  2. 現在タダラフィル20をオンデマンド服用しています。先生のお話を伺い、タダラフィルのジェネリック5mlを服用したいのですが、オンライン診療でお薬を出してもらうことは可能でしょうか?心不全等の既往歴はありません。65歳 男性

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