生理不順、月経困難症、月経前症候群などでQOLが低下してしまっている女性が少なくないですが、低用量ピルという効果的な対処法があります。普及はしてきていますが、それでもまだ欧米諸国と比較するとその普及は不十分のようです。
以前このブログでも低用量ピルに関わる記事を書いたように、当クリニックでも関わることが時々あります。
とはいえ、自分は循環器内科医ですから、自ら低用量ピルを処方することに関しては若干抵抗感がございました(処方していましたが)。
しかし・・・・!とある産婦人科Drがこのような言葉を発してくださいました。
「低用量ピルは産婦人科医でなくても 内科医でも処方できる。」
そう言ってくださっているのは、新進気鋭の若手産婦人科医柴田綾子先生(淀川キリスト教病院 産婦人科)です。「女性の救急外来 ただいま診断中! 」の著者としても有名なDrです。
柴田先生の低用量ピルに関するお話を拝聴する機会がありました。
基本的な部分を記しておきます。
女性の生理に纏わる症状
女性の生理に纏わる症状は、生理中(月経中)だけとは限りません。
・月経困難症:月経期間中に起こる病的症状
下腹部痛(月経痛)、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、抑うつ など
・排卵痛:生理の14日前頃に起こる。
片側の下腹部痛。数時間で改善することが多い
・月経前症候群:月経前3-10日の黄体期に続く身体的、精神的症状 月経が来ると改善する
情緒不安定、イライラ、抑うつ、下腹部痛、腰痛、頭痛、下肢浮腫など
低用量ピルにより、これらの症状の軽減が期待できるわけです。
低用量ピルは2種類に大別
① Oral Contraceptive (OC)避妊目的に使用する経口避妊薬 →自費診療
② Low Dose Estrogen-progestin(LEP)月経困難症の治療に使用する →保険診療
月経困難症や月経前症候群に使用するのは②のLEP製剤です。保険診療ですので当クリニックでも処方可能(処方箋発行)です。
OCは保険は効かず、自費診療です。当クリニックでは扱いません。
LEP製剤は進化していて、例えば
・120日連続内服が可能なヤーズフレックス配合錠
・77日連続内服が可能なジェミーナ配合錠
など便利な製剤が発売されており、これらを使うと毎月きていて悩まされていた生理が、1年に3-4回に減らすことができますし、もちろん症状もとても楽になることが期待できます。
ピル内服を中止すれば生理は戻り、妊娠・出産にも悪影響はありません。
低用量ピルのメリット
低用量ピル内服のメリットとして次のようなことが挙げられます。
低用量ピルのリスク
低用量ピル内服のリスクとして次のようなことが挙げられます。
羅列するとちょっと怖い感じがするかもしれませんが、確率的にはとても低いので心配しすぎることはありません。きちんと観察していれば大きな問題にはならないと思います。乳がん、子宮頸がんは別としてその他のリスクは心血管系に関わるものであり、循環器内科医としては身近な病態であり、観察や評価も慣れています。 → こちらも参考に
低用量ピルの3大禁忌
以下に該当する方は低用量ピルが禁忌か、慎重投与になりますので注意が必要です。医師と相談しましょう。
① がん
乳がん、子宮内膜がん、子宮頸がん(疑い含む)
② 血栓リスクの高い人
血栓塞栓症・冠動脈疾患の既往、手術前〜術後2週間、35才以上で喫煙15本/日以上、重症の高血圧、重症の糖尿病など
③ 重症肝障害
生理関連の症状で悩まされていたらもったいない
生理が憂鬱とか、生理絡みで体調がすぐれないという人は低用量ピルはとても良い選択肢です。その選択肢をなかなか選ぶことができず、QOLが低いまま、能力が発揮しきれずに過ごしているとしたらとてももったいないことです。
もちろん、専門家の産婦人科医による処方がベストなのでしょうが、産婦人科クリニック受診の敷居を高く感じる人もいるでしょうし、忙しくてなかなか受診できないという場合もあるでしょう。
通りかかりの内科クリニックで相談して、とりあえず処方してみるという「きっかけ」もありだと思います。まずは相談して始めてみて、必要に応じて経過の中で専門家に相談すれば良いと思います。
また、産婦人科クリニックで低用量ピルを始めたけれど、忙しくて通院が途絶えてしまったというケースもあるでしょう。内科クリニックで継続するという手もあります。
「低用量ピルは産婦人科医でなくても 内科医でも処方できる。」
この産婦人科専門医柴田先生の言葉を糧に、少しでも多くの女性のQOL向上、ウェルビーイングのサポートができればと思います。
お気軽にご相談ください。