身体活動のパラドックス! 余暇時間の身体活動を増やそう!

投稿日: カテゴリー: 身体活動


身体活動が身体に良いことは誰もが理解しているところだと思います。アフター5や休日はついついゴロゴロしてしまうけれど、自分は身体活動が多い業務だから、それで運動していることになるだろうと思っている方も少なくないと思います。

そんな方に、少々考え方を改めたくなるような研究が出ています。

「身体活動のパラドックス」に関する論文です。

「身体活動のパラドックス」


「身体活動のパラドックス」とは、余暇の身体活動と仕事中の身体活動の健康効果が対照的である、つまり、余暇の身体活動は健康に良いが、仕事中の身体活動は健康に良くないという説です。



The physical activity paradox in cardiovascular disease and all-cause mortality: the contemporary Copenhagen General Population Study with 104 046 adults.
Eur Heart J. 2021 Apr 14;42(15):1499-1511.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33831954/



【方法と結果】

コペンハーゲン(デンマーク)の一般住民10万4,046人(20~100歳)を対象にした疫学調査。

2003~2014年にベースラインの測定を行い,余暇時間と職業上の身体活動レベルを、自己申告に基づいて「低値」「中等度」「高値」「極めて高値」の4群に分けた。



職業上の身体活動
「低値」:主に座って行う仕事
「中等度」:座位、立位、時に歩く仕事
「高値」:歩く、時に持ち上げたりする仕事
「極めて高値」:重い肉体労働

余暇時間の身体活動
「低値」:ほぼ座りがち。軽い身体活動が週2時間未満。
「中等度」:週2〜4時間の軽い身体活動
「高値」:週4時間以上の軽い身体活動、または週に2〜4時間の激しい身体活動
「極めて高値」:週4時間以上の激しい身体活動、または週に数回の定期的な激しい運動または競技スポーツ。



10年間(中央値)追跡、7913人(7.6%)の主要心血管イベント(MACE)と9846人(9.5%)の全死亡を観察した。


MACEや全死亡リスクに影響し得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、血清脂質、血圧、糖尿病、婚姻状況など)を調整。


余暇時間の身体活動レベルが低値の群に比較し、中等度以上の群は全て、MACEのリスク低下が認められた。


余暇時間の身体活動

高い群は「低値」と比較して、以下のMACE+全死亡リスク低下を認めた(ハザード比)


・「中等度」 0.86(0.78~0.96)
・「高値」0.77(0.69~0.86)
・「極めて高値」0.85(0.73~0.98)


高い群は「低値」と比較して、以下の全死亡リスク低下を認めた(ハザード比)


・「中等度」 0.74(0.68-0.81)
・「高値」0.59(0.54-0.64)
・「極めて高値」0.60(0.52-0.69)

職業的身体活動

高い群は「低値」と比較して、以下のMACE+全死亡リスク上昇を認めた(ハザード比)


・「中等度」1.04(0.95~1.14)
・「高値」1.15(1.04~1.28)
・「極めて高値」1.35(1.14~1.59)


高い群は「低値」と比較して、以下の全死亡リスク上昇を認めた(ハザード比)

・「中等度」1.06(0.96-1.16)
・「高値」1.13(1.01-1.27)
・「極めて高値」1.27(1.05-1.54)



同様の結果は、ライフスタイル、健康、生活環境、社会経済的要因に関する層、および追跡調査の最初の5年以内に死亡した人を除いた場合にも見られた。

身体活動の2つの領域のレベルは、MACEのリスク(P = 0.40)および全死亡のリスク(P = 0.31)に相互作用しなかった。

【結論】

それぞれ独立して、

余暇時間の身体活動が多いと、死亡リスクが減少。

職業的身体活動が多いと、死亡リスクが増加する。





バイアスは極力軽減するような努力はしているようですが、観察研究ですから完全にクリアできているわけではありません。

バイアスの残存や因果の逆転の混在は十分あり得るとは思います。

とはいえ、生活スタイルの再考を助長する情報だとは思います。



通勤時間の身体活動はこの研究では含まれていませんので、通勤時間の身体活動が「業務中」なのか、「業務外」なのか不明です。

徒歩や自転車で通勤する人は、自動車や公共交通機関で通勤する人よりも心血管疾患や死亡のリスクが低かったとする研究もあります(BMJ. 2017 Apr 19;357:j1456. )。

したがって、通勤中の身体活動は悪くないと思います。


まとめ



余暇時間の身体活動が多いと、死亡リスクが減少し、職業的身体活動が多いとリスクが増加する可能性があります。

しっかりと余暇の時間を確保し、リラックスした環境で体を動かしましょう!

業務中の身体活動は無理しすぎず。


【参考文献】

・Holtermann A, Schnohr P, Nordestgaard BG, Marott JL. The physical activity paradox in cardiovascular disease and all-cause mortality: the contemporary Copenhagen General Population Study with 104 046 adults. Eur Heart J. 2021 Apr 14;42(15):1499-1511. doi: 10.1093/eurheartj/ehab087. PMID: 33831954; PMCID: PMC8046503.

・Celis-Morales CA, Lyall DM, Welsh P, Anderson J, Steell L, Guo Y, Maldonado R, Mackay DF, Pell JP, Sattar N, Gill JMR. Association between active commuting and incident cardiovascular disease, cancer, and mortality: prospective cohort study. BMJ. 2017 Apr 19;357:j1456. doi: 10.1136/bmj.j1456. PMID: 28424154.



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