新型コロナ感染(COVID-19)は後遺症として自律神経障害を来たす

投稿日: カテゴリー: 医療一般


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では様々な後遺症をきたしうるという話を昨日しました。

様々な臓器に様々な異常をきたし、様々な症状の後遺症を呈するわけですが、それらの機序の1つとして「自律神経障害」が挙げられます。

COVID-19の後遺症としての自律神経障害にテーマを当てた論文


COVID-19の後遺症としての自律神経障害にテーマを当てた論文があります。


Autonomic dysfunction in post-COVID patients with and without neurological symptoms: a prospective multidomain observational study.
J Neurol. 2021 Aug 12:1–10.


【方法】

対象は、COVID-19罹患後4週間から9ヶ月経った患者180人(女性70.6%、51歳±13歳)。COVID-19の発症から受診までの期間の中央値は59日(31~175日)でした。

COMPASS-31(Composite Autonomic Symptom Scale 31)という自律神経に関する質問票とその他のいくつかの質問に答えてもらい、また自律神経の1つの指標である起立テスト(起立して血圧や脈拍を測定するテスト)を行いました。


COMPASS-31とは、自律神経機能障害の症状を評価するために広く検証されているツールであり、自律神経機能に関連する6つの領域、すなわち起立障害,血管運動機能,分泌機能,胃腸機能,泌尿器機能,瞳孔運動を評価するものです。





【結果】


・何らかの自律神経障害を有していたのは対象患者の61%。

頻度が多い自律神経障害は



・自律神経障害のうち多かった症状は以下のもの。

– 起立性障害
– 分泌機能障害(涙、汗など)
– 排尿障害
– 瞳孔運動障害


・上記の障害は既報の健常対照者と比較するとその割合が高かった。(つまりCOVID-19により自律神経障害が促される可能性)


環境条件に対する耐性の低下



・以下のように環境条件に対する耐性の低下を認めた。

– 暑さ(22.2%)
– 寒さ(37.2%)
– 湿度(15.6%)
– 風(7.2%)


で認められた。


・主観的な接触温熱感覚の変化は、

– 暑さ(10.6%)
– 寒さ(11.7%)


で認められた。



性機能障害は14%



・14.4%の人に性機能障害が認められた。


COVID-19と男性の性機能障害(勃起不全)に関しては以前も触れたことがあります。ただ、今回の性機能障害の頻度は男女差がありませんでした。女性にも影響があるということです。

<参考>



その他の結果




・起立テストにより、13.8%の人に起立性低血圧が認められた。

・若年者ほど自律神経障害の症状が強かった

・女性の方が自律神経障害を呈する確率が高かった。

・頭痛や無力感、ぼーっとする(Brain fog)などの神経症状がある人も、ない人も自律神経障害の有無には大きな差はなかった(起立障害は神経症状がある人の方が多かった)。



自律神経障害の原因や障害メカニズムは不明


自律神経障害の原因や障害メカニズムは不明です。炎症性サイトカインの影響、過去の感染症や自己免疫疾患との関連、微小循環障害、脳血流への影響、残存する肺損傷による二次的な低酸素血症の影響、長期の臥床の影響などが挙げられますし、複合的な原因かもしれません。


最後に


COVID-19の後遺症の中には、自律神経障害による症状もかなり含まれることが示唆されました。自律神経失調の治療の基本は、運動(身体活動)、睡眠、食事といった生活習慣を正すことが基礎になります。COVID-19の罹患後も可能な範囲で身体を動かしたりすることが大事と言えそうです。このことに関してはまた次回にでも書こうと思います。


【参考文献】
・Buoite Stella A, Furlanis G, Frezza NA, Valentinotti R, Ajcevic M, Manganotti P. Autonomic dysfunction in post-COVID patients with and without neurological symptoms: a prospective multidomain observational study. J Neurol. 2021 Aug 12:1–10. doi: 10.1007/s00415-021-10735-y. Epub ahead of print. PMID: 34386903; PMCID: PMC8359764.

新型コロナ感染(COVID-19)は後遺症として自律神経障害を来たす” への2件のフィードバック

  1. 私は、2020年12月中旬にコロナに感染し、現在9か月目を迎えようとしています。最初はとてもゆっくりコロナの症状が出てきました。最初の1週間は、コロナに感染したとは思っていませんでした。幸運なことに、その際、他の人とのコンタクトがあまりなかったため、家族を含む他の人を感染させていないようです。感染後約2か月後にCT検査や血液検査を受けることになりました。内科医の検査で血栓の心配がないとのことで多くの検査は受けられていませんが、自律神経失調症により、酷い腹痛、背中の痛み、頭痛、胸の痛み、肝臓や食道の炎症、手足のしびれと痛み、排泄や尿の問題、目神経の問題、思考や集中力の問題、睡眠障害などがあります。一番つらいのは夜に起こる酷い腹痛で、それを耐えても、その痛みで眠れなかった夜となり、その結果、睡眠障害により様々な症状が戻ってきます。早くもっといろいろなことがわかり、酷い腹痛が起こらないこと願うばかりです。

    1. 吉川麻里子様、貴重な経験をシェアしてくださり誠にありがとうございます。特異的な治療法がありませんので対症療法になりますが、それに加えて生活習慣の管理(身体活動、睡眠、食事)とストレス回避が重要になります。1日も早い回復をお祈りしています。

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