新型コロナウイルス感染症の後遺症で心臓病が増加

投稿日: カテゴリー: 医療一般循環器

新型コロナのオミクロン株の感染拡大もようやくピークを超えて、新規感染者数は減少傾向ですが依然東京では救急搬送困難件数や高め横ばいであるなど、医療体制に余裕が出てくるまでもう少し時間はかかりそうです。

一連のコロナ騒動の中、「コロナはただの風邪」と主張する方々も少なくありませんが、そんな主張に影を落とすような論文が出ました。

一言で言うと、新型コロナウイルスに感染すると長期的に心臓病になりやすいと言う趣旨です。


COVID-19の長期心血管系転帰


Long-term cardiovascular outcomes of COVID-19.
Nat Med. 2022 Feb 7.


COVID-19の長期心血管系転帰

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35132265/


【背景】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期の心血管合併症はよく知られている。COVID-19の急性期以降の心血管合併症についてはまだ包括的な特徴が得られていない。
COVID-19の急性期後の心血管系アウトカムを調査した研究はいくつかあるが、そのほとんどは入院患者に限られ、追跡期間も短い。


【目的】
COVID-19の急性期以降の心血管合併症を評価する。


【対象者および方法】
米国退役軍人健康管理局(VHA)のデータベースを用いて、

・COVID-19患者153,760人
・非感染者5,637,647人(contemporary controls) 
・2017年(パンデミック前)の非感染者5,859,411人(historical controls) 

の3つのコホートを利用し、1年後までの心血管疾患のリスクを評価・推定した。


【結果】
COVID-19感染者は、感染後30日以降、

・脳血管障害
・不整脈
・虚血性および非虚血性心疾患
・心膜炎
・心筋炎
・心不全
・血栓塞栓症

などの心血管疾患の発症リスクが増加することが示された。


急性期のケア状況(非入院、入院、集中治療室への入院)つまり重症度に応じて段階的に増加したが、感染急性期に入院していない人(=軽症者)でも明らかであった。


年齢,人種,性別,肥満,喫煙,高血圧,糖尿病,慢性腎臓病,高脂血症,心血管疾患リスク因子に基づくサブグループにおいても全てのグループでリスクは増加した。


つまり、心血管疾患リスクが低い人でもリスクが上がると言うことである。


【結論】
COVID-19罹患者は、1年後の心血管疾患リスクが増大するため注意を要する。


要するに


新型コロナウイルスに感染すると、仮に軽症であっても、長期的(1年後)に心臓病になるリスクが上がると言うことです。急性期に中等症、重症になった人は長期的な心臓リスクも上昇します。


特に心筋炎は、軽症の人でもリスク3倍ほどに上昇します。
コロナワクチン接種における副反応で心筋炎のリスクが上がるから打ちたくない、、と主張する人も少なくないですが、コロナに罹患した場合の心筋炎発症リスクの方がはるかに高いと考えられます。


この論文の著者は、

「重篤な心血管系後遺症のリスクを含め、long COVID(長期的な様々な合併症)を予防する最善の方法は、新型コロナウイルス感染を最初に予防すること」

と主張しています。おっしゃる通りと思います。


また、著者は世界的にコロナ感染拡大が顕著なので今後世界中で心臓関連疾患が増加する懸念あり、対策が必要だと警鐘を鳴らしています。


機序は?

(ご興味のない方は、難しいので読み飛ばしで下さい)


ところで、新型コロナウイルス感染でなぜ長期的に心臓病が増加するのでしょうか。

いまのところ、COVID-19と急性期以降の心血管系疾患の発症との関連を示すメカニズムや仕組みは、完全には明らかにされていません。

想定されるメカニズムとしては、

・心筋細胞へのウイルスの直接侵入とその後の細胞死による障害の残存
・内皮細胞の感染、内皮の炎症
・心臓組織における複数の細胞型の転写変化
・補体の活性化と補体を凝固障害、微小血管障害など

が想定されています。

ACE2のdown regulationとレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の調節障害、自律神経障害、炎症性サイトカインのレベル上昇、TGF-βシグナルの活性化が、心臓の組織の線維化と瘢痕化を誘導します。


まとめ


新型コロナウイルス感染は、軽症であっても、持病がなくても、1年後までの心臓病リスクが上昇します。

コロナ感染した方で、心臓の調子が悪いかな?と感じるようなことがあれば一度ご相談ください。

コロナ感染した方も(再感染の可能性もあります)、まだ感染していない方も、感染予防が重要です。

心臓的観点からすると、ワクチン接種、手洗い消毒、そして(パンデミックが収まるまでは)三密回避、屋内でのマスクを推奨したいです。



【参考文献】
Xie Y, Xu E, Bowe B, Al-Aly Z. Long-term cardiovascular outcomes of COVID-19. Nat Med. 2022 Feb 7. doi: 10.1038/s41591-022-01689-3. Epub ahead of print. PMID: 35132265.

新型コロナウイルス感染症の後遺症で心臓病が増加” への2件のフィードバック

  1. いつもブログを拝見させていただいています。
    新型コロナウイルスに感染して1月以上が経過しました。
    感染前は安静時心拍数が50前後でしたが、感染後の今は50台後半から60で推移しています。
    毎日のジョギング習慣があり、その日のコンディションにもよりますが10キロ程度は走れたのが、
    コロナ感染後は3キロから4キロ走るのがやっとという状況で、最近はウォーキングに切り替えています。
    日常生活に支障はないので後遺症ではなと思いますが、これもコロナ感染の影響と考えて良いでしょうか。
    また、中長期的な心疾患のリスクを考えると運動は控えるべきでしょうか。

    1. 中村様、ありがとうございます。情報が限られていますので一般論としてお答えします。1週間外出せずに安静療養するだけで顕著に筋肉は落ちますし体力も落ちます。コロナウイルス特異的な後遺症に関しては不明ですが、そうでなくともご指摘の現象は起こりうると思います。苦しいことを我慢して歯を食いしばって運動することはお勧めしませんが、そうでない範囲で少しづつ運動していくことは良いと思います。

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