ゼロリスクは簡単ですが。

投稿日: カテゴリー: 医療一般食事

大腸がん手術後の、とある方から術後患者向け栄養説明会で、「食物繊維の摂取は腸閉塞になる恐れがあるから控えなさい」との指導があったと伺いました。

この指導については、自分としては反対意見です。

 

食物繊維のメリット

大腸ガン術後ですと確かに腸閉塞予防として不溶性食物繊維を控えようと言う方針はよく耳にします。
医師をはじめとする医療従事者は、食物繊維の大切さを意外と知らないと思います。食物繊維は、多く摂取することによる全死亡リスク低下、心臓病リスク低下、大腸ガンリスク低下、糖尿病リスク低下などの効果が確実視されており、他にも例えば、乳がんリスク軽減も期待できます。精製された穀物よりも未精製の穀物が良いという話も今や常識だと思いますが、精製することによって食物繊維が失われてしまうことが大きな原因の1つと考えられています。

 

大腸ガン罹患患者の食物繊維摂取の是非

検索してみたら、関連論文がありました。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5776713/

大腸ガン(stage1-3)と診断された1,575人を対象としたこの前向きコホート研究です。
食物繊維の摂取量が5 g /日増加するごとに死亡リスクが14%低下しています。
腸閉塞の発症が増えたという記載はこの論文には記載ありません。

つまり、大腸ガンに罹患した患者でも、食物繊維摂取は推奨すべきであり、少なくとも腸閉塞予防に食物繊維をルーチンで控える指導は望ましくないと言えます。

 

 

ゼロリスク

医療者はいわゆる「ゼロリスク」を大変好みますし、しかも目の前の疾患(大腸ガン術後)のことに視野狭窄しがち。大腸ガン術後という状態に対しては食物繊維を取らないほうが(腸閉塞リスクが低くなるので)ベターのは当然ですし、「食物繊維を控えなさい」と言うことほど簡単なことはありません。
でもそれってプロじゃないと思うのです。

術後であっても、大切な食物繊維を少しでも摂取できるようにするにはどうすれば良いのか、と言うことを具体的にアドバイスするのがプロだと思います。

つまり、患者さんの状態を十分に把握して、そして食物繊維のメリットとデメリットを十分把握し、患者さんが最大限のメリットを得られるようにサポートしていくわけです。

 

循環器領域でも同じようなことはあります。

例えば、心臓病の人に運動を推奨することは若干のリスクを伴う可能性があります。

運動を控えましょう、、とお伝えすることは簡単です。

しかし、運動自体は心臓をはじめ様々な心身・健康へのメリットがあり、できれば控えたくありません。

その人の心臓リスクをしっかり見極めて、運動のメリットとデメリットを把握し、患者さんが最大限のメリットを得られるようにサポートして行きます。

そんな医療を心がけたいと思っています。

 

 

【参考文献】

・Reynolds A, Mann J, Cummings J, Winter N, Mete E, Te morenga L. Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses. Lancet. 2019;393(10170):434-445.

・Song M, Wu K, Meyerhardt JA, et al. Fiber Intake and Survival After Colorectal Cancer Diagnosis. JAMA Oncol. 2018;4(1):71-79.

 

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