ヨガで気軽に心臓リハビリ

投稿日: カテゴリー: ピラティスヨガ循環器身体活動

心臓は1日10万回も拍動する臓器です。毎日毎日絶え間なく働いていますから、当然経年劣化もしてきます。高齢化社会においては、経年劣化した心臓を抱える方が当然のように増加し、それとともに心不全をはじめとする心臓病の方も増加しています。

心臓病に罹患したのち、心臓リハビリを施すと病状が改善する(死亡リスク低下、QOL向上など)ことが知られています。しかしながら心臓リハビリが十分できる環境は必ずしも多くありません。

心臓リハビリの1つの選択肢としてヨガの活用の可能性が考えられています。最近の論文を1つご紹介します。

 

心臓リハビリプログラムにおけるヨガの統合


 Integrated Yoga Practice in Cardiac Rehabilitation Program: A Randomized Control Trial 
J Altern Complement Med. 2020;10.1089

 

対象:

下記を満たした男女66人(平均52.3±9.9歳、男86.3%)

(1) 最近発症した心筋梗塞(発症後10日~2ヵ月)

(2) 心不全(NYHA1-2)→軽い息切れ程度の症状

(3) 左室駆出率(LVEF)30%~50%→心臓のポンプ機能が軽度低下している

 

下記のような方は除外しました。

心臓のポンプ機能が顕著に低下(LVEF<30%)、NYHA3-4(息切れが強い)、不安定狭心症、閉塞性呼吸器疾患(COPD)、コントロール困難な不整脈、ヨガ実践不能な整形疾患、顕著な高血圧(>160/100)、心臓弁膜症、腎不全、肝不全。


方法:

条件に合致した66人の参加者をヨガ群(n=33)と対照群(n=33)に無作為に割り付けました。

ヨガ群は、標準的な治療に加えて、病院のヨガセンターで1時間のヨガクラスに週3日、12週間出席しました。ヨガは、アーサナ(身体的なポーズ)、プラナヤマ(呼吸法)、リラクゼーションテクニックからなるプログラムで、経験のあるヨガ指導者による指導を受けました。週の他の日は自宅で自分で1時間のヨガを行いました。

 

対照群は、標準的な治療のみを受けました。

主要アウトカムは、左室駆出率(LVEF)。

その他、QOL評価、採血による脂質代謝評価、メンタル状態の評価などを行いました。

試験開始時と、終了時(3ヶ月後)に測定しました。


結果:

・左室駆出率(LVEF)は、両群間で統計学的な有意差はありませんでした(U=420.5, p=0.218)

(有意ではありませんが、対照群に比しヨガ群でわずかに改善しました)

 

ヨガ群では、対照群に比し、

・うつ(CDS;Cardiac Depression Scale , p=0.0)

・不安(HAM-A;Hamilton Anxiety Rating Scale , p=0.0)

・QOL(生活の質)スコア(ASI;Duke Activity Status Index, p=0.0)

・運動強度 (METs;metabolic equivalents, p=0.0)

の統計的に有意な改善が認められました。

 

・脂質プロファイル(中性脂肪、コレステロール)

に関しては両群で有意差はありませんでした。


結論:

心臓リハビリテーションプログラムとしてヨガを組み込むことは可能と考えられました。

心機能(左室駆出率(LVEF))の改善は明らかではありませんが、うつ傾向や不安を軽減し、体力やQOLを向上させることが期待できます。

 

 

ヨガの効果のメカニズム


ヨガは、その呼吸や瞑想的要素も手伝い、交感神経の活動を低下させ、不安、抑うつ、ストレスの知覚を改善することが知られています。自律神経調整を通じて、身体的、精神的、感情的、知的レベルでの定期的な内観、内省、自己観察によるマインドセットが是正されます。ヨガは神経-内分泌-免疫経路の調節を促し、視床下部-下垂体-副腎系に好影響を与えます。瞑想と呼吸法を組み合わせたヨガのポーズは、交感神経の活動を低下させ、心室充満圧の低下(心臓の負荷軽減)につながります。

副交感神経優位に加えて、ヨガは末梢組織による効果的な酸素取り込みを促進する可能性も指摘されています。ヨガトレーニングの8週間の健康効果は、健康な成人において、筋力(31%)、筋持久力(57%)、柔軟性(88%)、酸素取り込み(7%)を増強し、心血管リスクの減少を示しています(Integr Med Insights 2014;9:1–6.)。

これらが合間って、ヨガは心臓に好影響を及ぼすのかもしれません。

 

ヨガ・ピラティスは気軽に始められる


ピラティスは、ヨガ同様呼吸を重視し、瞑想的要素も多分に有していますので、ヨガに非常に近いエクササイズと思います。したがって、上記の研究と同等な効果がピラティスでも期待できるのではないかと個人的には考えています。

ヨガやピラティスは、実践する人により負荷を柔軟に調整することができ、ごく軽い負荷でも実践可能です。特別な器具は必要ありません。通常の有酸素運動よりもスペースも少なくて済みます。正しく行えば副作用もほぼありません。慣れれば、自宅でも実践可能ですし、オンラインの活用も容易です。

当クリニックは、ヨガやピラティスを推奨しています。zen placeというヨガ、ピラティススタジオと連携しています。布施自身はピラティスを実践しています。

zen place

https://www.zenplace.co.jp/

zen placeオンライン

https://www.zenplace.co.jp/videos

 

心臓病の方は上記のようにリハビリ代わりに行ってみてはいかがでしょう。心臓病でない方々も勿論おすすめです。新型コロナウイルス感染という面においても、心身を鍛えることで感染への抵抗力が増しますし、自粛による運動不足の解消にも繋がります。

まずは経験豊富な指導者から正しいやり方を学んで、その後自宅でオンラインで気軽に楽しむのが良いかと思います。

 

【参考文献】

・Sharma KNS, Pailoor S, Choudhary NR, Bhat P, Shrestha S. Integrated Yoga Practice in Cardiac Rehabilitation Program: A Randomized Control Trial [published online ahead of print, 2020 Jun 29]. J Altern Complement Med. 2020;10.1089/acm.2019.0250. doi:10.1089/acm.2019.0250

・Hari Krishna B, Pal P, Pal GK, et al. A randomized con- trolled trial to study the effect of Yoga therapy on cardiac function and N Terminal Pro BNP in heart failure. Integr Med Insights 2014;9:1–6.

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です