新型コロナウイルス感染拡大は相変わらずです。
様々な対策が講じられていますが、現時点で最も有効とされているものが「ワクチン接種」です。もちろん限界はありますが、それでも他の対策と比較しても圧倒的な効果を示しています。
ワクチン接種の有無により行動が制限・許可されたりというワクチンパスポートも世界的に徐々に広がってきており、日本でもそのような概念が導入される可能性は高いと思います。
現在、コロナ病棟、集中治療室などで重症化している患者さんの大半がワクチン未接種の方です。ワクチンの「重症化予防」効果は絶大と思わせる現象の1つです。
ワクチン不足の背景はあるものの、可能になり次第早急にワクチン接種することをお勧めしたいです。
繰り返しますが睡眠、重要です。
ワクチン接種の際は、睡眠を十分にとることがワクチンの効果を十分発揮するための対策になりうるという話をしました。
ワクチン小ネタ1
今回は、ワクチンの小ネタをご紹介いたします。
抗体産生などを含む「免疫反応」は日内変動があることが知られています。
ワクチンを接種する時間帯により、抗体産生の効果が異なってくる可能性があるわけです。A型肝炎ウイルスワクチン、インフルエンザウイルスワクチン接種により接種時間帯による効果の相違を調べた研究があります(Psychophysiology. 2008 Jul;45(4):663-6.)。
結論的には、午前中にワクチン接種した男性は、午後に接種した男性に比べて、A型肝炎およびインフルエンザに対する強い抗体反応を示しました。
女性にはそのような傾向は見られませんでした。免疫反応にも性差があるようです。
新型コロナウイルスのワクチンに当てはまるかは不明です。
ワクチン小ネタ2
過去の研究では、慢性的なストレスは免疫抑制作用がありますが、急性のストレスは免疫強化作用がある可能性が示唆されています。
急性ストレスに反応して、免疫グロブリンAの分泌増加や、末梢血中のナチュラルキラー細胞や好中球の数の増加、サイトカインの産生増加などが生じることが知られています。
健康人を対象に、インフルエンザワクチン接種直前に身体的ストレス、精神的ストレスをかけ、その後の免疫反応を調べた研究があります(Brain Behav Immun. 2006 Mar;20(2):159-68. )。
対象は大学生(平均22歳、学生60名(男性31名、女性29名))で、無作為に身体的ストレス群、精神的ストレス群、対象群の3群に割り当て、各々の課題を行い、その直後にインフルエンザワクチン接種し、その4週後、20週後の免疫反応を調べました。
身体的ストレスは、130W(男性)、95W(女性)で4分間のサイクリングを行い、その後、予測最大仕事量の55%で25分間のアクティブリカバリーを行うもの。
精神的ストレスは、5人の参加者で、数字の暗記競技を45分間で4回行い、経過中に不快な音を鳴らされたりという感じのもの。
結果は、身体的ストレス、精神的ストレス、のいずれかを受けた女性は、ストレスを受けなかった女性に比べて、ワクチン接種後の抗体反応が高いという結果でした。このメカニズムに関しては、IL-6が関わっている可能性が考えられていますが、よくわかっていません。なお、男性では差がありませんでした。
新型コロナウイルスのワクチンに当てはまるかは不明です。
まとめ
新型コロナウイルス感染拡大で閉塞感が漂う今の社会を打破する方法で、現時点で最も有効と考えられているのがワクチン接種です。
是非とも一人でも多くの人が、少しでも早く接種できることを願っています。
当クリニックでは残念ながら新型コロナワクチン個別接種は対応できておりませんが、スタッフは、日曜日などの休診日に自治体や自衛隊のワクチン接種や、企業の職域接種に出向き、微力ながら協力しております。
・新型コロナ感染に対して、現時点で最も有効とされているものが「ワクチン接種」です。
・ワクチン接種の前後は特に睡眠をよく取りましょう。
・男性は、午前中にワクチンを接種するとより効果的かもしれません。(午後でも良いので早い時期に接種したほうが良いです)
・女性は、ワクチン接種前にご自身にストレス(身体的・精神的いずれでも)をかけると、より効果的かもしれません。
・午前でも午後でも、ストレスあってもなくても、とにかく、ワクチン接種することが大事です。
【参考文献】
・Phillips AC, Gallagher S, Carroll D, Drayson M. Preliminary evidence that morning vaccination is associated with an enhanced antibody response in men. Psychophysiology. 2008 Jul;45(4):663-6. doi: 10.1111/j.1469-8986.2008.00662.x. Epub 2008 Mar 11. PMID: 18346041.
・Edwards KM, Burns VE, Reynolds T, Carroll D, Drayson M, Ring C. Acute stress exposure prior to influenza vaccination enhances antibody response in women. Brain Behav Immun. 2006 Mar;20(2):159-68. doi: 10.1016/j.bbi.2005.07.001. Epub 2005 Aug 15. PMID: 16102936.