女性の更年期障害は誰もが知るところです。年齢が上がり女性ホルモンの分泌が低下したりバランスが崩れることで様々な症状を呈する状態です。
一方、男性にも更年期障害があることは意外と知られていません。男性も40-50代頃から、いわゆる不定愁訴と言われるような様々な症状を呈することが少なくありません
例えば以下のような症状です.
1. 精神,心理症状
落胆,抑うつ,苛立ち,不安,神経過敏,生気消失,疲労感
2. 身体症状
骨・関節・筋肉関連症状
発汗,ほてり
睡眠障害
記憶・集中力の低下
肉体的消耗感
3. 性機能関連症状
性欲低下,勃起障害,射精感の減退
これらの症状は様々な原因で出現します。
例えば糖尿病などの全身的な疾患やコルチゾールや成長ホルモンといったホルモン分泌異常、あるいは抑うつ状態などメンタル不調も有力な原因になります。
そして原因の一つとして男性ホルモン「テストステロン」の分泌が低下することで このような症状を呈する病態が注目されています。 LOH症候群(LOH; late-onset hypogonadism) と言います。
つまり、男性更年期障害のうち、テストステロンレベルが低下しておりそれが原因であると考えられる場合にLOH症候群と解釈します。
LOH症候群の典型的な症状、徴候は以下の通りです。(Lunenfeld, et al:Aging Male 8:56−58, 2005)
1) リピドー(性欲)と勃起能の質と頻度,とりわけ夜間睡眠時勃起の減退
2) 知的活動,認知力,見当識の低下および疲労感,抑うつ,短気などに伴う気分変調
3) 睡眠障害
4) 筋容量と筋力低下による除脂肪体重の減少
5) 内臓脂肪の増加
6) 体毛と皮膚の変化
7) 骨減少症と骨粗鬆症に伴う骨塩量の低下と骨折のリスク増加
LOH症候群と診断した場合にはテストステロンを注射などにより補充することで症状が改善し QOL 向上が期待できます.
ホルモンの注射と言うと危険性、副作用が心配な方が少なくないと思いますが、適応を正しく見極め、事前の検査を適切に行い、経過をきちんと観察すれば決して危険なものではありません。
まずは上記のような男性更年期障害もしくは loh 症候群を疑うような症状徴候がある方はお気軽にご相談下さい。
【参考】「加齢男性性腺機能低下症候群 診療の手引き」