本日発売!患者・家族に寄り添うアドバンス・ケア・プランニング

投稿日: カテゴリー: ポジティブ心理学医療一般日記

2019.6.3発売です。布施も少しだけ分担執筆しております。

基本的には医療者向けの本ですが、介護や福祉に携わる方は特に参考になるのではないかと思います。

 

患者・家族に寄り添うアドバンス・ケア・プランニング—医療・介護・福祉・地域みんなで支える意思決定のための実践ガイド—   角田ますみ (著, 編集)

 

 

 

自分は昨年まで、毎日のように突然死やそれに近い病状悪化を呈するような患者(特に高齢者)に関わる業務に従事していました。
救える命もありますが、救うことができない難しい状況も多々。そんな現場で多くのジレンマを感じていました。

 

社会復帰できる確率がとても低いであろう高齢重症患者に対し、家族の希望で濃厚な高度医療を施すことが少なくありません。
ご本人は意識がなかったりで、ご自身の意思を表出することはできません。
家族の意思で、気管挿管、人工呼吸器、補助循環装置、透析機器、気管切開、、、管だらけ、機械だらけになったり。
そんな治療を施しながら、「ご本人は、むしろ辛いだけではないか? 本当にこのような姿を望んでいたのだろうか?」と疑問が湧きます。

ご本人が、何が何でも長く生きたいという思いであったのであれば、それを目指すという選択肢は正当化されます。
しかし、仮に、ご本人がこのような医療を望んでいなかったとすれば、この医療介入は極めて「非倫理的」な行為とも解釈できます。
「より長く生きて欲しい」という家族の思いや善意、「命を救うべく努力することが医療のデフォルト」という医療従事者の固定観念もしくは善意により、「非倫理的行為」が助長されるのです。

高齢患者が激増している今、自分の勤務する病院の救命センターの救急専門医が呟いた言葉が衝撃的。

「救命センターじゃなくて、もはや延命センターだよ」


救命治療:患者の命を救う目的でなされる医療処置
延命治療:病気が治癒する見込みがないにもかかわらず、延命のために行われる手段や医療処置
(角田ますみ先生資料)

人間は誰しも亡くなる、死亡率100%です。
にもかかわらず、自分の身近な(ご高齢の)方の命が脅かされると、「信じられない」「まさか」という思いを抱く方が多いのです。

一方で、実は、ご高齢の方の多くは、死生観を持っていたり、どのような最期を迎えたいとか多少なりとも考えています。
しかしながら、その思いを家族や周囲の人と共有していないがために、ご自身の思い通りの最期を迎えられないケースにつながってしまうのです。

「死」に関する話は、タブー視される傾向があります。
それゆえに、ご本人も、ご家族も、社会も、ハッピーでない展開に陥ってしまうということです。
そうならぬように、日頃からお茶の間で、一家で、「死」に関する話題をざっくばらんに話し合える、そんな文化構築が必要かと思っています。
サザエさん一家が、円卓を囲んで、波平やフネの「死」について明るく話し合うイメージです。
それにより、皆納得した、「ハッピーな最期」を共有することにつながります。

アドバンスケアプラニング(ACP)は、「病気により意思決定能力が低下した際に今後の治療の進め方や最後の迎え方など目標を考えて計画するもの。」
(角田ますみ先生資料から抜粋)

自分の価値観をしっかり言語化して、身近な人と話し合うこと。定期的な確認と見直しが必須で、時々振り返り、修正しながら進む。
このプロセスこそが、ACPなのです。定型的な形や書類があるわけではありません。
重要なのは、意思決定していることよりも考えるプロセスです。

最期を意識することにより、「今」の大切さ、「限られた時間」の大切さを、より強く感じるようになります。
そして、「今」をより充実した時間にすべく、密度の濃い生活を心がけるようになります。
そこで活きるのが”幸せのフレームワーク”PERMA”です。
死を意識したり、死生観を共有したりすることで、充実した「生」、幸せな「生」につながるのです。

ウェルビーイングの構成要素PERMA

 

 

今は、救急病院からクリニックや在宅医療という職場環境に変わりましたが、「

生」や「死」に対するスタンスは変わりません。

 

急性期医療現場で患者さんが、家族が、医療者たちが感じるジレンマを、この環境で少しでも緩和できるような働きができれば良いと思っています。

 

全ての方にとって、他人事の話ではありません。

一人でも多くの医療者の方、介護や福祉に携わる方に、ぜひこの本を手にとっていただければと思います。

 

 

当クリニックでは、在宅医療にも取り組んでいます。お気軽にお問い合わせください。

 

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