スマートウォッチで心筋梗塞の診断は出来るのか?

投稿日: カテゴリー: 循環器心拍

不整脈診断に役立つスマートウォッチ


スマートウォッチで心電図が記録できることはこれまでも何度か触れてきました。

(現状では、多くのスマートウォッチは医療機器として認可されていませんので診断機器としては使用できません)

心電図機能付きスマートウォッチ

心電図機能付きスマートウォッチと携帯型心電計の比較

 

例えば、動悸がした時にこの心電図記録の機能を活用すれば、「不整脈」が起きているのか否か、起きているとしたらどんな種類の不整脈なのか、などが分かり、その後の治療方針決定などにも大きく役立つ可能性があります。「不整脈」を診断する上で、循環器医にとってとても貴重な情報となります。

 

以前、動悸症状を時々自覚する患者さんが(スマートウオッチではありませんが)携帯心電計を購入され、所持していました。ある日「ついに動悸発作の時の心電図の記録ができました!」と言われて提示してもらったの波形をみて驚きました。それは、心室頻拍といって命に関わる可能性のある不整脈の波形でした。幸い、この後精査して治療して、動悸症状はなくなりました。携帯心電計がとても役立ちました。

 

 

心筋梗塞の診断は通常、標準12誘導心電図が必要


心電図から得られる情報は、ざっくり2つに分けられます。

  • リズムの異常 ;不整脈

  • 波形の異常;心筋梗塞など

 

上記の不整脈は「リズムの異常」です。つまり、心拍が速いとか、遅いとか、不規則とか、一拍抜けるとか、と言う感じの異常です。上の写真の不整脈は「速い」タイプの不整脈です。

一方で、心拍数は正常範囲内としても、波の形が異常(=「波形の異常」)という場合があります。例えば波の山が高くなったり、低くなったり、幅が広くなったり、狭くなったり、、などという変化です。典型的な病気は「心筋梗塞」です。

心筋梗塞とは、心臓の血管(冠動脈)が詰まってしまい、心臓の筋肉(心筋)への血流が途絶えてしまい壊死する、命に関わる病気です。死亡率はおおよそ30-40%くらいとの報告もあり、また死亡する人の半数以上は病院にたどり着く前に死んでしまうというデータもあります。突然死の代表的な病気です。

心筋梗塞になると、心電図の波形が「ST上昇」という変化を呈することが特徴的です。

通常、標準12誘導心電図という心電図の記録の仕方でその波形の異常を捉えます。

図や写真のように、胸に6つの電極を貼り付け、両手両足にも電極を取り付け、写真内の画面のように12種類の心電図波形が出力されるのです。これらの波形の変化を解析して、心筋梗塞の診断の手がかりにします。

 

通常、心筋梗塞などの「波形の異常」の心電図は、スマートウォッチの心電図機能では評価は困難です。

 

 

スマートウォッチが心筋梗塞診断の手がかりに!


しかし、スマートウォッチを工夫して使用することで標準12誘導心電図に近い波形を記録することができます。つまり、心筋梗塞の診断の手がかりになり得るということです。

Single-Lead ECG Recordings Including Einthoven and Wilson Leads by a Smartwatch: A New Era of Patient Directed Early ECG Differential Diagnosis of Cardiac Diseases?. Sensors (Basel). 2019;19(20):4377.

 

こちらの論文によると、図のようにapple watchを胸につけたりして心電図を記録することで標準12誘導心電図に遜色のない波形が得られるとしています。

( 図出典:Sensors (Basel). 2019;19(20):4377.)

A I:左手首に時計を付け、crownに右人差し指を付けて記録
B    II:左下腹部に時計を付け、crownに右人差し指を付けて記録
C III:左下腹部に時計を付け、crownに左人差し指を付けて記録
D V1:第4 肋間右傍胸骨で記録
E V4:鎖骨中線第5肋間腔で記録
F V6:左中腋窩線の第5肋間で記録
(D-Eは、時計を胸部のそれぞれの場所に付け、右手の人差し指をcrownに付けて、左手で右手首を掴んで記録 )

 

( 図出典:Sensors (Basel). 2019;19(20):4377.)

左側の黒い線が、通常の12誘導心電図のうちの6誘導の波形。右側の赤い線が、apple watchの波形です。

sweep速度(波形が流れる速度の機器設定)が異なりますが、それ以外は顕著な波形の相違はありません。apple watchでも十分評価可能です。

apple watchを腕から外したり、そして、計6回記録しなくてはいけない煩雑さはあるものの、apple watch以外の道具は不要ですし、誰でも、いつでも、どこでも、記録できます。

 

 

オンライン診療に活かせる可能性


急性心筋梗塞は、半分くらいは前兆なく急に発症します。典型的には、胸部の真ん中が締め付けられるような重い痛みが生じ、肩や腕や頚部に広がることが多いです。冷汗を伴うことも多いです。このような症状でしたら、我慢することなく早々に救急車を呼ぶことが最も安全です。

しかし、それほどひどくもないけれど胸が痛い気がする、、など、迷われた際にはスマートウォッチで上のような方法で心電図を記録し、オンライン診療で相談し、その波形を提示するようなスタイルも今後選択肢になってくるかもしれません。

下の波形は、apple watchで記録した心筋梗塞の波形です。循環器医が一目見れば、明らかに異常であることが分かります。

 

 

まとめ


・スマートウォッチや携帯心電計は、不整脈(リズムの異常)の診断の手がかりになります。

・スマートウォッチや携帯心電計を活用することで、心電図波形異常の評価も可能になり、心筋梗塞の診断の手がかりになりえます。

・オンライン診療の質を向上させる可能性があります。

・ただし、Apple watchの心電図機能は2020年5月現在、日本では使用できません。

・心電図機能を有するスマートウォッチは日本にも複数流通していますが、多くは医療機器として認可されていませんので「診断」はできません。あくまでも補助情報です。

 

 

【参考文献】

Samol A, Bischof K, Luani B, Pascut D, Wiemer M, Kaese S. Single-Lead ECG Recordings Including Einthoven and Wilson Leads by a Smartwatch: A New Era of Patient Directed Early ECG Differential Diagnosis of Cardiac Diseases?. Sensors (Basel). 2019;19(20):4377. Published 2019 Oct 10. doi:10.3390/s19204377

 

 

 

 

 

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