低用量ピルの副作用「静脈血栓症」を疑った場合の対処を語る

投稿日: カテゴリー: 医療一般女性医学

低用量ピルの普及


女性の社会進出とともに低用量ピルが普及しています。生理不順、月経困難症、月経前症候群などでQOLが低下してしまう方にとっては、なくてはならないものとなっています。また、避妊目的で内服している方もいらっしゃいます

とても有用な低用量ピルですが、懸念される副作用の1つが「静脈血栓症」です。

低用量ピルの副作用「静脈血栓症」


・静脈血栓症とは?

静脈内に血の塊(=血栓)が形成してしまう病気です。ふくらはぎなど足の静脈に血栓が出来ることが多く、その場合足がむくんだり、腫れたり、痛みが出たりします。足の静脈に出来た血栓が血流に乗って流れだしてしまうと、骨盤→腹部→胸部→心臓→と流れていき、最後は肺の血管詰まってしまい、肺塞栓症という命に関わる病態に至る可能性があります。

【静脈血栓症の主な症状】

・ふくらはぎの痛み、むくみ、握ると痛い、赤くなる(下肢深部静脈血栓症)

・胸痛、息苦しい(肺塞栓症)

・静脈血栓症のリスク

海外の調査では低用量ピル服用者の静脈血栓症発症のリスクは,年間1万人当たり3〜9人(ピルを服用していない人は年間1万人当たり1〜5人)と報告されています。

決して高い確率ではないのですが、上記の肺塞栓などにより死に至る場合もあり、2003年〜2014年に13人が血栓症で死亡したとする厚生労働省の報告もあります。

静脈血栓症は、低用量ピル開始後3ヶ月以内に発症することが多く、その後リスクは少しづつ減っていきますが、服用していない人に比するとリスクは高いです。

その他、静脈血栓症のリスクを上昇させる因子は、

・加齢

・肥満

・喫煙

などです。

飛行機に長時間搭乗することで生じてしまう静脈血栓症(エコノミークラス症候群)のように、「安静」もリスクを上昇させる因子となります。

新型コロナウイルス感染症拡大により、外出自粛や在宅勤務となり活動度が下がり、安静が余儀なくされている方も多いです。静脈血栓症のリスクとなりますので、ぜひ足を動かすような(特にふくらはぎ)活動、運動を積極的に行ってください。

静脈血栓症を疑った場合の対応


低用量ピルを内服中に、上に示したような症状を呈するなど静脈血栓症の疑いがある場合は早急に循環器内科に相談することをお勧めします。

一般的に静脈血栓症は、循環器内科が対応する場合が多く循環器内科医はその対処に慣れています。

問診・診察の上、必要に応じ、

・下肢静脈超音波検査で足の静脈内血栓を検索、同定

・上記の血栓部位や範囲によりリスクを評価

・心電図や心臓超音波検査で、肺塞栓症の診断とそのリスク評価

・採血による評価(Dダイマーなど)

などを容易に、かつ即座に行えます。もちろん当クリニックでも可能です。

重要なことですので繰り返しますが、静脈血栓症を疑う症状を呈したら早めに相談ください。

女性の皆さまのQOL向上をサポート


当クリニックでも、低用量ピルを内服している方で、その副作用を心配し受診されるケースが少なくありません。実際に静脈血栓症と診断された方もいらっしゃいます。

静脈血栓症を発症したら原則的に低用量ピルは一旦中止しますが、その後絶対に再開できないというわけではありません。低用量ピルのメリットとデメリットを勘案し、メリットが大きいようであれば、ピル以外の血栓症の誘因となりうる因子を極力是正し、女性の方々のQOLを最大限に確保すべく低用量ピルの再開を目指したいと思っています。

静脈血栓症を疑う方、ご心配な方はお気軽にご相談ください。

また、当クリニックでも保険適応の低用量ピルであれば処方も可能です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です