気温も上がってきましたし、新型コロナウイルス感染症の影響でマスク装着が余儀なくされ、それによる熱中症助長も懸念されています。マスク装着していると喉が乾きづらく、水分補給が不足する可能性があります。
当クリニックでも、診察や超音波検査を行うことで体内の水分量の推定をよく行いますが、特にご高齢の方で水分が少なめと思われる方が増えている印象を持っています。
水分が少なめと思われる方には水分摂取を推奨しますが、一体どのくらい飲めば良いのか?という質問をいただくこともしばしばです。
喉が乾いた時に水分補給をするということがもちろん基本なのですが、実際に我々は1日にどのくらい水分を摂取しているのでしょうか?
日本人の平均水分摂取量
日本の4つの地域(長野、大阪、鳥取、沖縄)在住の男女256人(30-76歳)の1年間春夏秋冬の水分摂取量を調べた研究があります( Eur J Clin Nutr. 2015;69(8):907-913.)。
この研究によると、日本人の1日あたりの平均水分摂取量は以下の通りです。
男性 2423 g/日
女性 2037 g/日
米国の推奨値(男性 3700ml、女性2700ml)よりも少ないですが、ヨーロッパの推奨値(男性2500ml、女性2000ml/日)とほぼ同程度のようです。
飲み物由来の水分、食べ物由来の水分
興味深いのは、欧米の水分摂取に関する研究では、飲水、飲料による水分摂取量が総水分摂取量の70-80%を占め、残りの20-30%が食品からの摂取なのですが、日本は飲水、飲料による水分摂取量と食品からの摂取量がほぼ50%ずつである点です。
欧米
飲料由来の水分 70-80 %
食品由来の水分 20-30 %
日本
飲料由来の水分 50 %
食品由来の水分50 %
つまり、日本人の水分摂取は、概ね以下のようになります。
男性
飲み物由来:1250 g
食べ物由来:1250 g
女性
飲み物由来:1000 g
食べ物由来:1000 g
日本では、欧米に比べてスープ、麺類、米飯などの水分を多く含む料理が多いことや、蒸す、煮る、炒めるなどの水分を多く含む調理法が多いことが、この割合の差に繋がっているものと考えられています。
季節による水分摂取量の変化
夏には当然汗もかきますし、喉も乾きます。飲水量も増えるでしょうが、どのくらい増えるのでしょうか。この研究ではその点についても調べています。
当然ですが、平均総水分摂取量(男女平均)は以下のように夏に最も多く、冬季に最も少なかったです。でも、意外と差はそれほど大きくないのですね。
春 2,172 g/日
夏 2,331 g/日
秋 2,280 g/日
冬 2,135 g/日
1日の平均気温が1℃上昇すると、水分摂取量は5.69g/日、飲料からの水分は8.40g/日増加しました。発汗とともにそれを補うように飲水量が増えることは自然だと思います。一方で、食品からの摂取量は2.71g/日減少しました。
日本人は寒い時期には温かいスープを飲む頻度が増え(夏より冬に多い)、また野菜や果物からの水分摂取量は、収穫期である秋に増える(夏よりも秋に多い)ようです。
日本人の水分摂取量のまとめ
大雑把にいえば、日本人の平均的な水分摂取量はこのくらいです。
男性
2,500ml/日
(飲み物由来 1,250ml、食べ物由来1,250ml)
女性
2,000ml/日
(飲み物由来 1,000ml、食べ物由来1,000ml)
食べ物由来の水分はあまり意識しないことが多いでしょう。
飲み物による水分補給は概ね1000-1250ml/日が基準であることを覚えておきましょう。
暑い日や環境、身体活動が多い時、発汗が多い時、あるいは口渇感が強い時などはこれに上乗せするような水分摂取を心がければ良いと思います。マスクをしているときは、喉が乾きづらいので喉の乾きがなくとも水分補給を心がけることが必要です(例えば、1時間ごとにコップ1杯)。
ただ、環境や活動により水分喪失量はかなり大きく変動し得る(1300-8630ml/日)ので注意が必要です。こちらの記事も参考にしてください。
また、心臓病や腎臓病など基礎疾患のある方は個別に調整が必要ですので主治医と相談してください。
【参考文献】
Tani Y, Asakura K, Sasaki S, et al. The influence of season and air temperature on water intake by food groups in a sample of free-living Japanese adults. Eur J Clin Nutr. 2015;69(8):907-913. doi:10.1038/ejcn.2014.290
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