身体に良い食事のキーポイントの1つは「食物繊維」
「炭水化物」といえば「低炭水化物ダイエット」「糖質制限」と言った言葉をよく耳にするように、太るとか、身体に悪いとか、やや悪者の扱いを受けることが少なくないです。しかしながら、決してそんなことはありません。そもそも炭水化物とは、
炭水化物=糖質+食物繊維
であり、確かに「糖質」の摂りすぎは身体にとって良くありませんが食物繊維とセットで摂ればむしろ身体に良いのです。
例えば、果物が身体に良い理由の1つは、糖質に加え食物繊維が豊富に含まれているからです。果物が身体に良くて、フルーツジュースが身体に良くないのは食物繊維が失われているからです。
精製された小麦粉より、未精製の全粒粉が身体に良い理由の1つは、食物繊維が豊富に含まれていることです。
精製された白米より、未精製の玄米が身体に良い理由の1つは、食物繊維が豊富に含まれていることです。
身体に良い食事のキーポイントの1つは「食物繊維」です。
それでは、「身体に良い」と言ってもどのくらい良いのでしょうか?
便通がよくなることは体感できますが、そのほかの健康効果で客観的なデータはあるのでしょうか?
食物繊維の健康効果のエビデンス
食物繊維の身体への影響に関する研究は多く、系統的レビューやメタ解析が複数発表されています。
2014年の42コホート研究のメタ解析(n=1,752,848)(Mol Nutr Food Res. 2015 Jan;59(1):139-46.)によりますと、食物繊維の摂取量が多い人は、少ない人に比し、全死亡リスク23%低下、癌発症リスク17%低下、炎症性疾患リスク43%低下という結果でした。
そして、食物繊維の摂取量が10g/日増えるごとに
・全死亡リスク11%低下
・心血管疾患死亡リスク20%低下
・虚血性心疾患死亡リスク34%低下
・がん死亡リスク9%低下
という結果でした。
2016年の15前向きコホート研究の メタ解析(Arch Cardiovasc Dis. 2016;109(1):39-54.)では、食物繊維の摂取量が多い人は、少ない人に比し、心血管疾患死亡リスク23%低下、虚血性心疾患死亡リスク24%低下という結果でした。
そして、食物繊維の摂取量が10g/日増えるごとに
・心血管疾患死亡リスク9%低下
・虚血性心疾患死亡リスク11%低下
・がん死亡リスク6%低下
という結果でした。
2019年の185の前向き研究と58の臨床研究を系統的レビュー、メタ解析した論文(Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):434-445.)でも、食物繊維を多く摂ることで、体重や血圧、コレステロール値が有意に低下し、全死亡リスク、心血管疾患死亡リスク、虚血性心疾患発症リスク、脳卒中発症リスク、糖尿病リスク、大腸がんリスクが15〜30%低下することが示されました。
そして、食物繊維の摂取量が8g/日増えるごとに
・全死亡リスク7%低下
・虚血性心疾患死亡リスク19%低下
・糖尿病発症リスク15%低下
・大腸がん発症リスク8%低下
という結果でした。
まとめると、
食物繊維を多く摂ることで心臓病や血管病やがん、糖尿病などのリスクが下がり、食物繊維摂取量が10g/日増えるにつれ、死亡リスクは約10%づつ低下していくという感じです。
現代人は食物繊維不足
日本人の食事摂取基準(2020年版)によりますと、「成 人では理想的には 24 g/日以上、できれば 14 g/1,000 kcal 以上を目標量とすべきであると考え られる」としています。
しかしながら、日本人の食物繊維摂取量は減少傾向で、平成28年のデータですと成人でおよそ10-15g/日ほどしか摂取できていません。
日々の食事からどのようにして食物繊維を摂るか、については
厚生労働省のe-ヘルスネットの記事を転載します。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
「食物繊維は、魚介類や肉類などの動物性食品にはほとんど含まれず、植物性食品に多く含まれます。おすすめのとり方は、主食の穀類からとることです。1日のうち1食を玄米ごはん・麦ごはん・胚芽米ごはんに置き換えると、効率的に食物繊維が摂取できます。また、豆類・野菜類・果実類・きのこ類・藻類などにも多く含まれています。特にそば・ライ麦パン・しらたき・さつまいも・切り干し大根・かぼちゃ・ごぼう・たけのこ・ブロッコリー・モロヘイヤ・糸引き納豆・いんげん豆・あずき・おから・しいたけ・ひじきなどは、1食あたり摂取する量の中に食物繊維が2~3gも含まれています。効率的に食物繊維をとるには、これらの食材を毎日の食事の中にうまくとり入れると良いでしょう。」(転載 終)
未精製炭水化物(全粒粉、玄米)、豆類、ナッツ、野菜、果物、きのこ、海藻などが良さそうです。
これはホットクックで作った玄米豆ごはんです。「作った」というのもオーバーで、玄米と豆と水を入れてスイッチポンとしただけですが笑。それでも食物繊維的には良さそうです。
とは言っても、日々忙しくて外食が増えたり、コンビニ弁当やおにぎりが増えたりする方も多いでしょう。自分もその1人です。もっと気軽に食物繊維を摂れる方法はないでしょうか?
お勧めする1つは、「おからパウダー」です。
食物繊維を気軽に摂取できる「おからパウダー」
「おから」とは、大豆から豆腐を製造する過程で、豆乳を絞った際に残るかす、のことです。この「かす」が貴重なのです。
おからパウダーは、それを利用しやすいように粉末状に加工したものです。
各メーカーが様々な商品を出していますが、布施が一推しなのはこれです。
旭松食品 なめらかおからパウダー
この商品の良いところは、他の製品よりも遥かに多い食物繊維が含まれている点です。
多くのおからパウダー製品の食物繊維含有量は100gあたり40gほどのことが多いのですが、この旭松食品のおからパウダーは63.5gも含有しています。
その代わり、タンパク質含有量は少なくなりますが、自分的にはタンパク質はプロテインパウダーから摂りますので、おからパウダーは食物繊維を摂るものと位置付けていますので構わないのです。
自分は、これをヨーグルトに混ぜたり、豆腐とぐちゃぐちゃ混ぜたて食べることが多いです。色々な料理に入れたり、サラダにかけたり、コーヒーに入れたりしてみても良いようです。
20ccのスプーン1杯を摂れば、食物繊維を概ね5gほど摂ることができます。先の論文データからするとこのスプーン1杯で、死亡リスクが5%ほど低下することになります!!
日本人が平均的な食事をしていると食物繊維10-15g/日くらいしか摂りませんので、これにこのおからパウダーを20ccスプーン2-3杯分を追加で摂取すれば理想的な摂取量である24g/日以上をクリアできそうです。
食物繊維まとめ
・食物繊維は身体に良い食事のキーポイントの1つ。
・食物繊維を摂ることで心臓血管疾患、糖尿病、がんなどの病気予防になる。
・食物繊維摂取量が10g/日増えるにつれ、死亡リスクは約10%づつ低下する
・成人の目標食物繊維摂取量は 24 g/日以上。
・日本人成人の平均的な食物繊維摂取量は 10-15g/日。
・食物繊維が多く含まれる食材は、未精製炭水化物(全粒粉、玄米)、豆類、ナッツ、野菜、果物、きのこ、海藻など。
・気軽に食物繊維を摂取する方法の1つとしておからパウダーの活用が挙げられる。
・おからパウダー 20ccスプーン2-3杯/日を推奨。
【参考文献】
・Liu L, Wang S, Liu J. Fiber consumption and all-cause, cardiovascular, and cancer mortalities: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Mol Nutr Food Res. 2015 Jan;59(1):139-46. doi: 10.1002/mnfr.201400449. Epub 2014 Dec 11. PMID: 25382817.
・Kim Y, Je Y. Dietary fibre intake and mortality from cardiovascular disease and all cancers: A meta-analysis of prospective cohort studies. Arch Cardiovasc Dis. 2016;109(1):39-54.
・Reynolds A, Mann J, Cummings J, Winter N, Mete E, Te Morenga L. Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses. Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):434-445. doi: 10.1016/S0140-6736(18)31809-9. Epub 2019 Jan 10. Erratum in: Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):406. PMID: 30638909.
・「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf