ビタミンDとは
ビタミンDの最も重要な働きの1つは腸におけるカルシウムの吸収を促進することであり、不足するとくる病や骨軟化症、骨粗鬆症など骨の病気になりやすくなります。
しかし、カルシウム、骨に関わる役割のみならず、免疫系をはじめとする様々な働きが他にもあることがわかってきています。
ビタミンDの不足は様々な病態と関連している
ビタミンD不足をどのように把握するのか?
どうやって自分のビタミンDの状態を把握することができるのでしょうか?
ビタミンD血中濃度は通常、25(OH)D(=calcidiol)を測定します。
最適な25(OH)D濃度は、議論があり、各国の学会や組織の基準間でも若干相違があります。20ng/mlで概ね十分という意見もあれば、最低30ng/mlは必要という意見もあります。そのような複数の情報とビタミンDの安全性やコストなどを総合して考えると、今のところ自分(布施)は概ね以下と考えています(私見を含みます)。
25(OH)D
・>100 ng/ml:毒性リスクあり
・80〜100 ng/ml:過剰
・50〜80 ng/ml:やや高め
・40〜50 ng/ml:理想的濃度
・20〜40 ng/ml:正常下限〜軽度不足
・12〜20 ng/ml:ビタミンD不足
・<12 ng/ml:ビタミンD欠乏
ちなみに、世界のさまざまな地域におけるビタミンDの状態に関する系統的レビュー論文では、調査した地域の多くでビタミンDレベルが20ng/mL未満でした(J Steroid Biochem Mol Biol. 2014 Oct;144 Pt A:138-45)。
どのような人がビタミンD不足になりやすいのか?
どのような人がビタミンD不足になりやすいのでしょうか?
ざっくり言うと、陽を浴びていない人、ビタミンDの吸収が悪い人、です。
具体的に、ビタミンDが不足しやすい人として以下が挙げられます。
・肌が黒い
・肥満
・ビタミンDの代謝を促進する薬を内服している(フェニトインなど)
・入院患者
・施設入居者(老人ホームなど)
・日焼け対策を強化している人
・骨粗鬆症患者
・炎症性腸疾患患者
このようなハイリスクと考えられる人は、ビタミンD血中濃度を測定してみると良いと思います。
骨の変形などを呈するくる病(小児)や骨痛や骨折を呈する骨軟化症(成人)であればまだ発見しやすいのですが、一見明らかな症状を呈さない”無症状”のビタミンD不足の人がかなり多いことが近年指摘されています。
風邪を引きやすいとか、花粉症などアレルギー体質の方、骨折しやすいというような方、あるいは仕事で全く日光を浴びないような方もビタミンD血中濃度測定を検討しても良いと思います(ただし費用に関して、測定理由によっては保険が効きかず自費診療になります)。
ビタミンDを補うには?
ビタミンDが不足している場合にはその是正を試みます。あるいは、不足しないように予防を試みます。
● 陽を浴びる
まずは、陽を浴びることです。直射日光です。窓ガラス越しでは効果があまりありません。
少なくとも週2回、午前10時〜15時の間に5〜30分程度直射日光を浴びるのが目安です。
浴びすぎは皮膚がんのリスクが上がりますので悩ましいところです。
● 食事
先に示したように、ビタミンDを含む食材としてタラの肝油やサケ、マグロといった脂の多い魚(ビタミンD3)、あるいは椎茸、キクラゲ(ビタミンD2)などが挙げられますが、通常の天然の食材からビタミンDを十分摂取することは難しいです。
ビタミンDを含有(添加)した食品を探して食するのは有効です。
● サプリメント
サプリメントの使用は良い選択肢です。
ネットで見ますとたくさんのビタミンDサプリが販売されています。迷ってしまいます。まあおそらくはどれも大差ないものと思いますが、(ビタミンD2よりも)ビタミンD3が効率がよく、推奨されます。
必要なビタミンDの量は、個人差があります。ベースラインのビタミンD濃度に依存し、また、個人のビタミンD吸収能、肝臓でビタミンDを25(OH)Dに変換する能力、その他、未知の遺伝的因子にも依存すると考えられます。
まずはビタミンD3サプリを1000〜2000IU/日で開始し、3ヶ月を目安にビタミンD濃度を再検し量を調節する感じで良いと思います。
一般的な推奨投与量よりやや多めかもしれませんが、この程度ですと過剰投与になることはありません。とはいえ、盲目的に服用するのは好ましくないと思います。
ちなみに、成人のビタミンD推奨栄養所要量は600-800IU(ただし適切な日光浴が前提)、米国食品栄養委員会による成人のビタミンD許容上限摂取量は4,000IUです。10,000IU以下では中毒症状が出る可能性は低いとされています。
iHerbなどのサイトでは安価なサプリがたくさん販売されています。
amazonでリーズナブルなサプリの一例は、
大塚製薬 ネイチャーメイド スーパービタミンD(1000I.U.) 90粒 90日分
● 処方薬
通常の医療機関で処方される内服薬に活性型ビタミンD製剤があります(ロカルトロール、エディロール、アルファロール など)。これらは骨粗鬆症の治療薬として使われますが、そうでないビタミンD不足の治療には通常使用しません。副作用としての高カルシウム血症を助長しやすいという面もあります。
ビタミンD中毒とは?
ビタミンD中毒は、通常ビタミンD製剤の過剰投与により生じます。つまり、サプリメントや処方薬の飲みすぎです。症状は主に高カルシウム血症によるもので、錯乱、多尿、多飲、食欲不振、嘔吐、筋力低下、不整脈などを呈します。
ビタミンD中毒は、摂取量10,000~40,000 IU/日、ビタミンD濃度(25(OH)D)200~240ng/mLほどの報告がほとんどです。
「メガドーズ」といった大量投与によるビタミンD中毒の報告もあり、要注意です。
ビタミンDサプリを大量に服用されている方は、ビタミンD濃度を測定することをお勧めいたします。盲目的に多量の服用は望ましくないと思います。
有効だったら儲け物くらいの気持ちで、、
ビタミンDの血中濃度と様々な病気・病態との相関が示唆されています。
先に記載したように、ビタミンDの血中濃度が低いと新型コロナ肺炎による死亡リスクが高いという相関が示唆されています。新型コロナウイルス感染が拡大し、緊急事態宣言が発令されている今、とても気になるところです。
一点、重要なことは、ビタミンDサプリ内服で感染症やがん罹患や死亡リスクが低下するというエビデンスは明らかではありません。相関関係はあるものの、明確な因果関係が証明されていないものが多いということです。(ビタミンDとカルシウムの補充が、高齢者の転倒や骨折のリスクを減少させることが対照試験で示されています。)
とはいえ、相関関係を示した多くの研究、そしてサプリメントは比較的安価で豊富にあることを考えると、個人的には、有効だったら儲け物というくらいの気軽な感じで服用しても良いような気はします。ただし、過剰摂取には要注意です。
ご自身のビタミンDの状態を把握したい方はご相談ください。
【参考資料】
●Up To Date
・Overview of vitamin D
・Vitamin D deficiency in adults: Definition, clinical manifestations, and treatment
●厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』 ビタミンD