減酒外来、そして減酒薬「セリンクロ」

投稿日: カテゴリー: 医療一般食事

アルコール依存やアルコール関連問題にお悩みの方は少なくなく、最近では「減酒外来」という飲酒量を低減することが目的の外来を設ける医療機関も増えてきました。とは言え、まだその存在を知らない人も多く、また減酒薬の存在もあまり知られていません。

当クリニックでは内科系クリニックとしては珍しくアルコール関連問題に悩んでいる方の対応もしております。高血圧や肝機能障害をはじめとする内科的問題も併せて抱えていらっしゃることも多いので、内科医として当然といえば当然です。心臓にも直接的に、間接的に、悪影響を及ぼしうるので循環器内科医としても重要な任務とも言えます。

中には、患者さんご自身は、自分のことを「飲み過ぎ」とは思っていても「アルコール依存症」とは思っていないアルコール依存症の方も少なからずいらっしゃいます。



アルコール依存症とは

アルコール依存症の診断ガイドライン(ICD-10)では、
以下のうち3項目以上が、

・1カ月以上にわたり同時に生じていた場合
あるいは、
・(持続期間が1カ月未満であれば、)過去12カ月以内に繰り返し同時に生じた場合

に、アルコール依存症と診断されます。


1. 飲酒したいという強い欲望や切迫感を感じる

2. 飲酒行動(開始・終了、飲酒量調節)を制御することが困難


3. 禁酒あるいは減酒時に離脱症状を呈する


4. 当初得られた酩酊効果を得るために、飲酒量を増やさなければならない


5. 飲酒のために本来の生活を犠牲にする、飲酒の影響からの回復に要する時間が延長


6. 心身や生活に明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒を続ける




これらを3項目満たさなくとも、それに近い方は「予備軍」と考えることもできます。

こちらのスクリーニングテストも参考になります。
https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/



ベターな選択肢、減酒

アルコール依存症の治療の原則は「禁酒」=「断酒」です。

しかし、様々な理由で「断酒」が難しい人、どうしても希望されない人がいらっしゃることもまた現実です。
断酒治療からドロップアウトしてしまったり、そのような人に対してはもうアルコール依存の治療は行えない、ということになりますと、治療を諦めてしまうようなことになってしまい、それはそれで望ましいことではありません。

ベストは「断酒」だけれども、ベターな治療を施すということで飲酒量低減=「減酒」という選択肢が出てきます。


減酒外来の流れ

当クリニックでは、アルコール依存症やその予備軍の方、飲酒に対して何らかの問題を抱えている方々に対して減酒外来を行っています。アルコール依存の専門医ではありませんので、まずは気軽にご相談頂き、治療への第一歩を踏み出してもらうきっかけになればと思っています。(重症アルコール依存症の方は、専門施設をご紹介することになります)

① まず前提として、飲酒や生活習慣に基づく身体的問題の有無や程度を評価し、併存疾患、既往歴、治療薬などを把握させて頂きます。これにより減酒の程度を調整します。身体的病状によっては断酒一択になる場合もございます。

② 現在の飲酒量や飲酒に関連する問題点を把握させて頂きます。
アルコール依存症ではなくても、ブラックアウトしてしまったり、友人や家族に迷惑をかけてしまったり、怪我をしたり、様々な問題があります。

③ 各人の問題点に対して、ご自身が描く最終的なゴールを確認します。そして、飲酒量などの目標を設定をします。相談の上、まずは実現可能な目標から始めます。

必ず「飲酒日記」を付けてもらいます。毎日の飲酒量や飲酒状況、一緒に飲んだ人など可能な限り詳しい記録をお願いしています。

つい飲みすぎて、目標をクリアできない日ももちろんあります。心配しなくても大丈夫です。でもそんな日も、必ず率直に記録してもらいます。

④ 再診時に飲酒日記を見せて頂き、その進捗具合に応じて、目標を微調整し、最終的なゴールに向けて段階的に進めていきます。



減酒薬「セリンクロ」という選択肢

上記の流れをしっかりと踏みつつ、減酒薬「セリンクロ」を並行して使用するという選択肢があります。

「セリンクロ」とは飲酒前に内服する頓服薬です。飲酒する1-2時間前に内服すると、飲酒する欲求が軽減し、飲酒量が低減することが期待できます。脳に広く分布するオピオイド受容体を介して、アルコールによる脳内報酬系に作用することで効果を発揮します。

現状ではセリンクロは上記の診断基準に従い、「アルコール依存症」と診断された人が適応になります。そして、1 日平均飲酒量は、男性60g超、女性40g超というのが目安になります。


主な副作用は悪心やめまいです。内服しているうちに軽減することも期待できます。

繰り返しますが、飲酒日記や目標設定などを含め「心理社会的治療」をしっかりと行いながら内服する薬です。
「薬だけ服用して、簡単に減酒できる」というわけでは決してありません。


久里浜医療センターのデータですと、比較的軽いアルコール依存症の方の方が重い方よりも効果が高いようです。重症化する前に早めに手を打つことが良さそうです。


【参考】
患者向け医薬品ガイド「セリンクロ錠 10mg」
https://www.otsuka.co.jp/for-patients/information/assets/pdf/selincro_1901.pdf




日本のアルコール事情の下で

日本はアルコールに非常に寛容な国です。街を歩けば、コンビニエンスストアだらけです。ほぼ必ずアルコールが販売されています。24時間いつでも誰でも簡単に安価で高濃度のアルコール飲料を手にすることができてしまいます。

ストレスフルな社会状況も併せて考えれば、誰でもアルコール問題を抱えうると思います。

反面、アルコール問題を抱えていても意外と相談できる窓口がありません。


自分自身も長年アルコール問題を抱えていました。近年、ようやくその呪縛から解き放たれることができました。アルコール問題を抱えている方が、自分にとって他人事とも思えないことも減酒外来をしている大きな理由です。


アルコール依存が疑われる方はもちろんですが、飲酒に関して何らかの問題(どんな問題でもOKです)を抱えている方は誰でも御予約頂ければと思います。

診療予約はこちら
https://clinic.zenplace.co.jp/contact/


こちらも参考に。

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