ヨガやピラティスあるいは太極拳や気功などはMind-Body exerciseと言うカテゴリーとして扱われることがしばしばあり、これらは特に瞑想的な要素を多分に含んでおり心と身体のつながりを促進させ、”運動”とは言いながらも身体のみならず心にも良い影響を促すことが多数報告されています。
精神神経障害におけるヨガの治療的役割に関する新しいレビュー論文を見かけたのでちょっと読んでみました。
Therapeutic role of yoga in neuropsychological disorders.
World J Psychiatry. 2021 Oct 19;11(10):754-773.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34733640/
今回はヨガの脳への影響に関して一部をご紹介いたします。
ヨガの脳への影響
ヨガは、さまざまな脳領域において、さまざまな神経生物学的変化をもたらします。脳のシナプス可塑性を調節し、認知タスク、特にワーキングメモリを促進します。
( PLoS One. 2017;12(8):e0182366. )
( Front Integr Neurosci. 2018;12:26. )
ヨガは大脳半球間の連携と調和を高め、神経認知機能を向上させます。(Complement Ther Clin Pract. 2015 May;21(2):112-8.)
具体的にどのような影響があるのか、もう少し具体的に見てみましょう。
脳内神経伝達物質へのヨガの影響
「脳内神経伝達物質」といった言葉を聞いたことがあるかと思います。ドーパミンとか、セロトニンとか、あるいはGABAとか。ヨガはそれらに影響を与えることが多数報告されています。
γ-アミノ酪酸(GABA)は、大脳皮質の興奮や神経可塑性(環境に応じ変化したり、修復したりすること)を調節する主要な抑制性神経伝達物質と考えられています。
ヨガは大脳皮質のGABA作動性抑制作用を促進し、その下流の脳領域を調節することが示唆されています。
(Prog Brain Res. 2019;244:387-413)
例えば、12週間のヨガの実践は、視床下部のGABA値を顕著に高め、気分を改善させ、不安を軽減させました。
(J Altern Complement Med 2010; 16: 1145-1152)
視床のGABA値の上昇は、ヨガ実践者の前頭前野の局所的な脳血流の増加の結果である可能性があります。
(Med Hypotheses 2003; 61: 282-291 )
この領域の血流増加は、視床の網様体核の活性化とGABA生産量の増加につながる可能性があります。
( J Neurophysiol 1998; 79: 999- 1016)
脳内生体電気的活動へのヨガの影響
ヨガは、脳内の電気的活動、つまり脳波(EEG)にも影響を及ぼすことが指摘されています。
脳波にはいくつか種類があります。
・α波は、精神的に比較的活動していないとき、リラックスした状態の時に出現する傾向があります。基本的な認知プロセスと相関しています。
・β波は、開眼、覚醒時に優位に出現し、学業成績の向上や高い算術計算能力と関連しています。
・θ波は、浅い睡眠やまどろんでいる時に出現し、より低いレベルの不安と関連しています。
ヨガは、集中力を維持し不要な信号を遮断すべく関連性のない神経回路をオフにし、脳波の信号を調整します。
・瞑想は前帯状皮質と背外側前頭皮質の変化をもたらし、α波の活動を強化します。
(Psychol Bull 2006; 132: 180-211)
・ヨガの瞑想を行うと、脳波のβ波の活動が高まります。
(Indian J Physiol Pharmacol. 2003 ;47(2):157-63. )
・瞑想中にθ波活動が増加し、瞑想の継続時間が長いほど、高いθ波とα波の活動と関連します。
(Anc Sci. 2015 Apr;2(1):13-19. )
・呼吸法、瞑想、姿勢に基づいたヨガの実践が、全体的な脳の活動、特に扁桃体と前頭皮質の活動を増加させることが示されています。
(Complement Ther Clin Pract. 2015 May;21(2):112-8.)
脳の構造に対するヨガの影響
ヨガはまた、様々な脳領域、特に大脳辺縁系において解剖学的変化をもたらす可能性が指摘されています。
( Clin Neurol Neurosurg. 2013;115(12):2419-25. )
・ヨガは、特に前頭皮質、扁桃体、海馬、島皮質、前帯状皮質における脳構造の変化と関連しています。
( Brain Plast. 2019 Dec 26;5(1):105-122. )
・ヨガの熟練者は、左島皮質、眼窩内側前頭前野、眼窩内側前頭前野、下側頭頂皮質など、優位半球のさまざまな領域で灰白質体積が大きい。
(PLoS One. 2016 Mar 3;11(3):e0150757.)
・ヨガ実践者は、外側中前頭回、背側上前頭回、前側上前頭回の一部を含む左前頭複合クラスターの新皮質の厚さが厚い。
(Front Aging Neurosci. 2017 Jun 20;9:201. )
・ヨガの熟練者は、性別と年齢をマッチさせた対照被験者と比較して、左海馬の灰白質の体積が大きい。
( Front Integr Neurosci. 2018 Jun 22;12:26. )
・瞑想やヨガを実践している人は、右の扁桃体の体積と左の海馬の体積が小さい。
( Brain Imaging Behav. 2018 Dec;12(6):1631-1639. )
まとめ
ヨガは、様々な心理的身体的に望ましい効果を我々に及ぼしてくれます。そのプロセスにおいて、脳の神経伝達物質、脳の電気活動、脳の構造に影響を及ぼしていることがわかりました。
ヒトは脳の発達により、地球上で繁栄してきました。人生100年時代ですし、自分たちの財産である「脳」を大事に、メンテナンスしていくことはとても重要だと思います。
そのメンテナンスの手段の1つとしてヨガを活用することは良い選択肢だと思います。ヨガに近いピラティスも類似した効果が得られるのではないかと、自分は思っています。
ヨガでも、ピラティスでも、脳を大切にしたいひとは実践すると良いと思います。まずはお好みの方を選んで試してみてはいかがでしょう。
新型コロナウイルス感染もひと段落と思ったら、2021年11月末現在、感染力の強いオミクロンという新たな変異ウイルスの出現が報道され世界中が感染再拡大を危惧しています。
ヨガ、ピラティスは、誰でも、どこでも、自宅でも、道具もなく実践できます。外出しづらいコロナ時代には相性の良いエクササイズです。
初めはインストラクターに指導を仰ぐことが良いと思います。
Zen Placeのヨガも良いと思います。オンラインでもできますし。慣れてくれば1人でもできると思います。
https://www.zenplace.co.jp/yoga/
zenplaceのピラティスもヨガ的要素を多分に含みますので良いと思います。
https://www.zenplace.co.jp/pilates/
とりあえず、Youtubeで色々みてみると良いと思います。
Youtube
https://www.youtube.com/hashtag/zenplace
【参考文献】
Nourollahimoghadam E, Gorji S, Gorji A, Khaleghi Ghadiri M. Therapeutic role of yoga in neuropsychological disorders. World J Psychiatry. 2021 Oct 19;11(10):754-773. doi: 10.5498/wjp.v11.i10.754. PMID: 34733640; PMCID: PMC8546763.