パーキンソン病におけるピラティスの有効性

投稿日: カテゴリー: ピラティスヨガ医療一般


パーキンソン病とピラティスに関して調べる機会がありましたので、こちらでもご紹介いたします。今回も雑多な情報になっておりますが、パーキンソン病、パーキンソン症候群を患った方やその傾向がある方、またそのようなご家族やお知り合いがいらっしゃる方は参考にされると良いかと思います。

パーキンソン病とパーキンソン症候群は医学的には区別されますが、いずれも典型的な症状としては運動緩慢、振戦、筋強剛、姿勢保持障害が挙げられます。そのほかにも精神症状、便秘などの自律神経障害、感覚障害、睡眠障害などの非運動症状がみられます場合があります。

ご紹介する論文は4つで、1つは2019年の系統的レビュー、メタ解析論文。あとは2021年と2020年の小研究3つです。

結論としましては、ピラティスはパーキンソンの方々のバランスコントロールに効果が期待できます。

系統的レビュー


① パーキンソン病に対するピラティスの恩恵:系統的レビューとメタ解析

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31412676/
Suárez-Iglesias D, Miller KJ, Seijo-Martínez M, Ayán C. Benefits of Pilates in Parkinson’s Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis. Medicina (Kaunas). 2019 Aug 13;55(8):476. doi: 10.3390/medicina55080476. PMID: 31412676; PMCID: PMC6723274.

【背景】
ピラティスは、パーキンソン病(PD)の人々にとって有益な運動方法である可能性がある。しかし科学的証拠を批判的にレビューした研究はない。

【目的】
PDのリハビリテーションとしてのピラティスの有効性に関し系統的レビューとメタ分析を実施すること。

【方法と結果】
複数の電子データベースでPDに対するピラティスに関する研究を体系的に検索(−2019年3月)。検索の結果条件に合致する4つのランダム化比較試験(RCT)と4つの非RCT研究を抽出し、対象とした。研究の質は、poorからfairの範囲。ピラティスは1つの研究以外は全てマットピラティス(ゴムやボールを含む)。1つはリフォーマー。60分セッション、週2-3回、6-12週間。筋力と可動域改善のメニューが中心、特に体幹と下肢。プログラムはレベルに応じ調整。3つの研究はピラティスと他のトレーニング(歩行、体操)を比較するものであった。いずれも顕著な有害事象は認めなかった(疲労、筋肉痛、筋攣縮、軽度めまいの報告はあり)。

■8つの研究の記述分析は、ピラティスがフィットネス、バランス、機能的運動性に有益な効果をもたらすことを示した。

・Physical Fitness 身体的フィットネス研究の半数で有意な改善を示した。具体的項目は、下肢筋力、上肢筋力、下肢柔軟性、腰-骨盤安定性、有酸素持久力、ボディマス指数(BMI)など。
・バランス3件のRCTでは比較対象群に比しピラティス群で大幅に改善。4件の研究ではピラティス介入前後で顕著な改善2件の研究で日常生活の中でのバランスへの自信が有意に改善。
・Functional Mobility 機能的運動性5件の研究のうち3件でTimed Up and Go(TUG)テストで測定された機能的運動性が有意に改善
・QOL 生活の質2つの研究のうち1つで有意な改善

■4件のRCTのメタ解析(n=112人が対象)は、ピラティスが下肢機能の改善において比較対象群よりも効果的であることを示した。

・30-Second Chair Stand (30SCS) test Hedges’ g = 2.52 (95% CI = −0.01, 5.05; p < 0.001); I2 = 90.3%; p < 0.01ピラティスが30SCSテストで比較対象群よりも大幅に改善
・Timed Up and Go(TUG)Hedges’ g = 1.09 (95% CI = 0.14, 2.05; p < 0.2001); I2 = 74.3%; p < 0.05TUGテストでもピラティスは比較対象群よりも大幅に改善
・global lower-body functioning(全般的な下半身機能)Hedges’ g = 1.62 (95% CI = 0.60, 2.64; p 2< 0.001); I2 = 83.8%; p < 0.001.全般的な下半身機能でもピラティスは比較対象群よりも大幅に改善ただし、異質性が高く質の高いデータではない。

【結論】
予備的なデータでではあるが、軽度から中等度のPD患者にはピラティスは効果的かつ安全に行うことができる。フィットネス、バランス、身体機能にプラスの影響を与える可能性がある。下肢機能に対するその効果は、他の従来の運動よりも優れているようである。より多くのサンプルを使用したランダム化研究が必要である。


小規模研究


②パーキンソン病患者のバランスと姿勢制御に対するクリニカルピラティストレーニングの効果:無作為化比較試験
https://www.futuremedicine.com/doi/abs/10.2217/cer-2021-0091
Çoban F, Belgen Kaygısız B, Selcuk F. Effect of clinical Pilates training on balance and postural control in patients with Parkinson’s disease: a randomized controlled trial. J Comp Eff Res. 2021 Dec;10(18):1373-1383. doi: 10.2217/cer-2021-0091. Epub 2021 Nov 2. PMID: 34726472.

【背景 】
クリニカルピラティスのエクササイズは、バランスを改善することが示されている。

【目的】
本研究では、パーキンソン病患者のバランスと姿勢制御に対するクリニカルピラティスと従来の理学療法エクササイズの効果を比較することを目的とする。

【対象と方法】 
40名の患者をクリニカルピラティス(CLP)群と従来の理学療法(COP)群のいずれかに無作為に割り付けた。エクササイズは週2回、8週間行った。運動開始時と終了時に、バランス、下肢筋力、転倒リスク、機能的可動性を評価した。

【結果 】
すべての測定値において、2群間で有意な増加が認められた(p<0.05)。COP群と比較して、CLP群では動的バランス値の有意な向上が認められた(p<0.05)。

【結論 】
CLPはCOPと同様に有効であり,より良い動的バランス値を示したことから,パーキンソン病患者のリハビリテーションに利用できる可能性がある.


③早期パーキンソン病患者のバランスと姿勢制御に対するピラティスと弾性テーピング(elastic taping)の効果 パイロット無作為化対照試験 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34924792/
Göz E, Çolakoğlu BD, Çakmur R, Balci B. Effects of Pilates and Elastic Taping on Balance and Postural Control in Early Stage Parkinson’s Disease Patients: A Pilot Randomised Controlled Trial. Noro Psikiyatr Ars. 2020 Apr 24;58(4):308-313. doi: 10.29399/npa.24935. PMID: 34924792; PMCID: PMC8665289.

【背景 】
PD患者におけるピラティスのトレーニングは、姿勢の安定性、可動域、動作の質、身体のアライメント、QOLを改善することが示されている。弾性テーピングは、神経疾患(脳卒中、多発性硬化症)や整形外科疾患において、筋緊張、可動域、圧平衡パラメータ、鎮痛の改善を目的に使用されている。PDのバランスと姿勢制御に対する弾性テーピングとピラティスエクササイズの組み合わせの効果を検証した研究は存在しない。

【目的】
初期段階のパーキンソン病(PD)患者のバランスと姿勢制御に対するピラティス・トレーニングと弾性テーピングの効果を調査すること。

【方法】 
患者をピラティス群、弾性テーピング群、対照群(待機者)の3群に無作為に分けた。ピラティスのトレーニングは6週間、週2回、1回60分行った。弾性テーピング群では、ピラティストレーニングに加え、姿勢矯正を目的として、週2回、6週間、背中上部に弾性テーピングを施した。The Kinesio Tex Gold FP elastic tapes (5 cm幅,0.5mm厚)を肩鎖関節の前面から僧帽筋の上部を横切り、第7胸椎に向かって斜めに貼付した。トレーニング前後の姿勢制御を評価するために、Berg Balance Scale, Trunk Impairment Scale, NeuroCom Balance Master performance test deviceのLimits of stability (LOS), Sit-to Stand, Walk Across, Tandem Walking Testsを実施した。

【結果】 
20名の患者(ピラティス群:男性6名、弾性テーピング群:女性2名、男性6名、対照群:女性3名、男性3名)のデータを分析した。ピラティス群と弾性テーピング群では、6週間後にLOSテストの反応時間が有意に減少し、Walk Acrossテストの歩行速度が有意に増加した。また、弾性テーピング群では、Tandem Walkテストにおける姿勢の揺れが有意に減少し、Sit-to-Standテストにおける立ち上がり指数が6週間後に有意に増加した(Wilcoxon検定、p<0.05)。

【結論 】
ピラティスはPDのリハビリテーション戦略として有効であり、PD患者の動的バランスと姿勢制御に対して改善効果があると考えられる。また、弾性テーピングは正しい姿勢のサポートに応用できると考えられる。

④ピラティスは、パーキンソン病患者のバランスコントロールを改善する 非盲検臨床試験

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32575003/    
Maciel DP, Mesquita VL, Marinho AR, Ferreira GM, Abdon AP, Maia FM. Pilates method improves balance control in Parkinson’s disease patients: An open-label clinical trial. Parkinsonism Relat Disord. 2020 Aug;77:18-19. doi: 10.1016/j.parkreldis.2020.05.037. Epub 2020 Jun 10. PMID: 32575003.

【背景】
パーキンソン病(PD)は進行性の神経変性疾患であり、姿勢の不安定さは転倒リスクの主要な決定要因であるため、ピラティスのようなバランス改善に焦点を当てた戦略は、運動症状の初期段階でも有益である可能性がある。

【目的】
前向きオープンラベル非無作為化対照試験において、ピラティスのバランス改善効果を評価すること。

【対象と方法】
対象患者は、40歳以上、パーキンソン病基準を満たし、臨床的に安定している患者。条件に合致した42名の患者を対象とし、介入群(IG)と対照群(CG)の2群に分けられた。初めに、神経内科医によりUPDRS (Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)、Schwab&England scaleにて初めに評価され、理学療法士がPerformance-Oriented Mobility (POMA) Scale, Timed Up and Go (TUG), Functional Reach Test (FRT) 、Parkinson’s Activity Scale (PAS)での評価を行った。IG患者は、週2回、1時間のピラティスセッションを12回、合計6週間受けた(一度に2人の患者のみ)。キャデラック、リフォーマー、ステップチェア、バレル器具のピラティス(メタライフ®)が、この研究のためにデザインされた標準プロトコールで使用された。4セッションを1サイクルとする3サイクルで構成され、最大10回までの反復が推奨された。CG患者は、同期間中、少なくとも週2回、ウォーキングやストレッチなどの運動を定期的に行うよう指導され、理学療法士が毎週電話にてフォローした。6週間終了後に上記評価を再び行った。

【結果】
両群のベースライン特性は同様であった。IG群では,介入前後およびCG群との比較において,すべての評価項目(POMA、TUG、FRT、PAS))で有意な改善がみられた.参加した患者のセッションの順守率は83~100%(10~12回完了)であった。

【結論】
提案したピラティスのプロトコルは、動的および姿勢的な要素を含むバランスコントロールに改善をもたらすことが示された。今後、運動機能とバランス制御に対する長期的な効果の可能性を探る研究が必要である。


まとめ

ピラティスの研究はそのほとんどが小規模研究で研究の質も高くありません。従って、その解釈には限界はあるもののご紹介したような有効性も期待できるわけです。

パーキンソン病(症候群)の診断・治療・リハビリに関しては医療機関でよく相談することが原則です。

医師の指示により医学的対処を受けた上で、補完的な手段としてピラティスを活用することは悪くないと思います。

パーキンソンへの特異的効果のみならず、心身に様々なメリットも期待できます。

いつも申し上げていますが、ヨガ、ピラティスは、誰でも、どこでも、自宅でも、道具もなく実践できます。外出しづらいコロナ時代には相性の良いエクササイズです。

初めはインストラクターに指導を仰ぐことが良いと思います。

Zen Placeのピラティスも良いと思います。
https://www.zenplace.co.jp/pilates/


とりあえず、Youtubeで色々みてみてはいかがでしょう。
Youtube
https://www.youtube.com/hashtag/zenplace

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