御高齢のご親族のいらっしゃる全ての方々へ

投稿日: カテゴリー: 生活習慣食事

現代版タンパク質不足


先日のブログで、特に20代女性のタンパク質摂取量が少ないという話をしました。無理なダイエットをしたり、その一方でスイーツなどの糖質や、脂質、加工品などを好んだり、あるいは、健康志向で野菜中心が過度になったりでタンパク質摂取量が減っている可能性を疑い、いわば「現代版タンパク質不足」と言っても良い状態と考えています。

疲労、頭痛、めまい、イライラ、不眠、、、の原因はこれかもしれません。

その一方で、ご高齢の方のタンパク質不足も懸念されます。

 

高齢者社会においてはサルコペニアやフレイルが問題


高齢化社会では、老年症候群、特にサルコペニア(高齢になるに伴い、筋肉量が減少していく現象)やフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)が問題となります。

健康長寿ネットの解説が平易で詳しいです。

・サルコペニア https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/sarcopenia/index.html

・フレイル https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/index.html

 

これらは高齢者の自立性や生活の質に大きな影響を与え、医療費の増加にもつながることから、注目度が高まっています。

日本では、フレイルとされる人の有病率は11.6%、プレフレイルとされる人の有病率は60.4%と報告されています( Geriatr Gerontol Int 2016; 16: 709–715)。

 

50歳を過ぎると、筋肉量は年間1〜2%の割合で減少します。筋力は50歳から60歳の間に1.5%低下し、その後は3%低下していきます( J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2010;1(2):129-133.)。加齢に伴う筋量の減少は、筋タンパク質の分解の増加よりも筋タンパク質合成の減少によるものが主と考えられています(Clin Nutr. 2014;33(6):929-936.)。

 

サルコペニアやフレイルの原因は多岐に渡りますが、1つのポイントは「タンパク質の摂取不足」です。タンパク質はエネルギー源というよりも、筋肉や骨をはじめとする身体の構成成分の形成や保持に寄与します(糖質や脂質はエネルギー源という面が大きいです)。身体的に脆弱化する高齢者にとっては大変重要であることは理解できると思います。

 

日本では、主にタンパク質不足を回避するために、食事摂取基準量で定義されたタンパク質の推定平均必要量(EAR)が設定されています。EARは成人で0.72g/kg/日、70歳以上で0.85g/kg/日となっています。ところが、多くの日本人はこれらのタンパク質摂取量の基準はクリアしているものの、サルコペニアやフレイルの予防を考えると不十分のようなのです(Geriatr Gerontol Int. 2018;18(5):723-731)。

 

ちなみに、ヨーロッパでは、地域に住む高齢者の最大10%、施設介護を受けている人の35%が、筋肉を維持するための最低摂取量である1日のタンパク質摂取量(0.7 g/kg体重/日)の推定平均必要量(EAR)を満たすのに十分な食事を摂れていないと報告されています(Clin Nutr. 2014;33(6):929-936.)。

 

サルコペニアやフレイルの予防のためにはどのくらいのタンパク質摂取が必要なのでしょうか。

 

サルコペニア、フレイル予防のタンパク質摂取量は?


若年及び中年成人に比べて高齢者では、たんぱく質摂取に反応して筋たんぱく質合成 が惹起されるための必要たんぱく質量が多いとする研究報告が複数存在します。高齢者は、より多くのタンパク質を摂取しなければいけないわけです。

最近の研究ではサルコペニアや虚弱体質の予防にはこれまでの推定平均必要量(EAR)以上のタンパク質摂取が必要である可能性が示唆されています。いくつか例を挙げますと、

・タンパク質摂取量が69.8g/日を超える(1.36g/kg/日)日本人女性はフレイルのリスクが低い(Nutr J 2013; 12: 164)。

・高齢者のタンパク質摂取量(1.5g/kg体重)が多いと、0.8g/kgの体重よりも、タンパク質合成が大きくなる(Am J Physiol Endocrinol Metab 2015; 308: E21–E28)。
・0.9 g/kg/日以上のタンパク質を摂取した70~79歳の男女は、タンパク質の摂取量が少ない人に比べて、3年間の除脂肪体重(つまり筋肉など)の減少が小さい(Am J Clin Nutr 2008; 87: 150–155.)。

これらの様々なデータより、欧米の各関連組織・学会は、少なくとも

1.0~1.2g/kg体重/日

のタンパク質摂取を推奨しています。

50kgなら50g〜60g/日

ということです。

あくまでも腎臓の病気などがない「健康な高齢者」への推奨です。

 

欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)は、さらに(Clin Nutr. 2014;33(6):929-936.)
栄養失調の高齢者や、急性または慢性疾患があり栄養失調の危険性がある高齢者には、食事はタンパク質

1.2~1.5g/kg体重/日

を提供すべきであり、重度の病気や怪我をしている人にはさらに高い摂取量を提供すべきである
という点も推奨しています。疾患を有する高齢者は、タンパク質の分解が進みやすいのでより多くの摂取が必要と言うことです。
※ 腎臓の機能が悪い方は、各人で調整が必要な可能性がありますので主治医と相談してください。

分散摂取ならプロテインの活用も有用


さらに、1日の総タンパク質摂取量よりも、各食事でのタンパク質摂取量が重要であることも示唆されています(Am J Clin Nutr. 2015;101(6):1330S-1338S)。一度にたくさんのタンパク質をとっても全て吸収できるわけではありません。効率よく吸収し活用するためには分散して摂取することがベターと言うことです。
健康な高齢者では1食あたり0.40 g/kg体重をタンパク質摂取量の最小値とすることが提案されています(J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2015; 70: 5762.)。つまり、

体重50kgなら、朝20g-昼20g-夕20g

のタンパク質を分散させて摂ると言うことです。
日本人の研究において、特に朝、昼のタンパク質摂取が少なくなる傾向があることがわかっています(Geriatr Gerontol Int. 2018;18(5):723-731)。
朝、昼、夜と分散してタンパク質を摂取するためには食事を3食しっかりと摂ることになります。もちろんそれがベストでしょうが、若者ですと多忙で難しい、高齢者ですと食欲が出ないとか、面倒とか、準備する気力がないとか、様々な理由で思い通りのタンパク質が摂取できないと言うことになります。
そのような場合、プロテインパウダーなどの活用は1つの良い方法と思います。

例えば、朝か昼、あるいは朝と昼にプロテインパウダーで20gタンパク質を摂取して、夜は食事から摂取すると言う感じにすると良いと思います。

 

以前の記事でもプロテインパウダーに関してご紹介しています。

タンパク質の合成という意味では、ホエイプロテイン(whey protein)がベターとされています。

これが最高!という訳ではありませんが、布施が今のところお勧めの2製品を紹介しておきます。布施は添加物が少なくて、変な味がついていないプレーンが好みです。

 

WPI ホエイプロテイン 1kg プレーン味 NICHIGA(ニチガ)

2,960円(2020.9.2現在)。タンパク含有率93.4%と高品質でその割に値段も良心的。一押しです。まとめ買いだとお得です。粉が細かくて舞いやすいのと、溶けにくい、泡が多くなるのが難点です。

 

リミテスト ホエイプロテイン WPC PURE 1kg プロテイン LIMITEST (プレーン, 1kg)

1,795円(2020.9.2現在)。タンパク含有率82.1%と上記よりは少し低いですがめちゃくちゃ安いです。初めに購入してみるのは良いかもしれません。溶けやすいです。

 

20ccのスプーンすり切り1杯で、プロテイン粉末約8gです。

→タンパク質含有90%だと、タンパク質7.2g/1杯

→タンパク質含有80%だと、タンパク質6.4g/1杯

 

1回にスプーン3杯のプロテインを水に溶かして飲めば、概ね20gのタンパク質が摂れます。

最近は、シェイカーで水にとかして飲むと言うよりは、自分はヨーグルトに混ぜて食べたり、少量の牛乳や豆乳に混ぜてこねくりまわしてヨーグルト風にして食べたりするのがお気に入りです。濃厚すぎる!と感じる方は冷凍ブルーベリーを少量入れるとすっきりさが増します。

 

最後に


高齢者のサルコペニア、フレイル予防として、毎日の身体活動や運動(レジスタンストレーニング、有酸素運動)はもちろん重要であり行うべきことでありますが、一方で栄養も重要です。今回はタンパク質に特に焦点を当てました。

 

本人にとってもちろん重要ですが、例えば高齢の親や親族を持つ家族にとっても重要です。親愛なる高齢者が少しでも長く健やかな心身で自立できていることは、本人のみならず周囲の人たちにとっても幸せなことです。つまり、若年、中年の者にとっても、決して人ごとではない問題なのです。

ご高齢のご親族の方がいらっしゃる方も多いと思います。自分も親が80代と高齢であり、プロテインパウダーを活用するよう贈ったりしています。皆様も贈ってみてはいかがでしょう。

おさらいです。

健康な高齢者の推奨タンパク摂取量は、

1.0~1.2g/kg体重/日(50kgなら50g〜60g/日)

です。

栄養失調やそのリスクがある高齢者、基礎疾患や併存疾患のある高齢者の推奨タンパク質摂取量は、

1.2~1.5g/kg体重/日50kgなら60g〜75g/日)

 

ただし腎臓の機能が低下している方は、タンパク質摂取が多い場合に病状が悪化する場合がありますので主治医との相談が必要です。

 

 

【参考文献】

・Satake S, Senda K, Hong YJ et al. Validity of the Kihon checklist for assessing frailty status. Geriatr Gerontol Int 2016; 16: 709–715.

・Deutz NE, Bauer JM, Barazzoni R, et al. Protein intake and exercise for optimal muscle function with aging: recommendations from the ESPEN Expert Group. Clin Nutr. 2014;33(6):929-936.

・von Haehling S, Morley JE, Anker SD. An overview of sarcopenia: facts and numbers on prevalence and clinical impact. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2010;1(2):129-133.

・Ministry of Health, Labour and Welfare, Japan. Dietary Reference Intake for Japanese 2015. Tokyo: Ministry of Health, Labour and Welfare, Japan, 2014.

・Ishikawa-Takata K, Takimoto H. Current protein and amino acid intakes among Japanese people: Analysis of the 2012 National Health and Nutrition Survey. Geriatr Gerontol Int. 2018;18(5):723-731.

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