タンパク質推奨というけれど、摂取量の上限は?

投稿日: カテゴリー: 医療一般食事

心身に不調感を感じている若い方、特に女性に十分なタンパク質摂取をお勧めしています。多くの若年女性はタンパク質摂取が足りないと感じるからです。

疲労、頭痛、めまい、イライラ、不眠、、、の原因はこれかもしれません。

 

ご高齢の方もタンパク摂取不足の方が多いです。高齢というほどではないけれど体力が落ちてきたなあと感じている年配の方も含め、十分なタンパク摂取を勧めています。

御高齢のご親族のいらっしゃる全ての方々へ

 

個々のバリエーションはありますが、概ね

1.0〜1.6g/kg体重/日

ほどのタンパク質摂取が望まれます。

体重50kgなら、50g〜80g/日と言うことになります。

 

ご高齢の方は、若者よりもむしろ多くのタンパク質が必要です。筋タンパク質合成の効率が悪いからです。

有経女性(生理のある世代の女性)は、男性より多くのタンパク質が必要です。毎月の月経で出血しますし、妊娠したら尚更です。

活動が多い人ほど多くのタンパク質が必要です。

状況や体調によっては、上記量よりもっと必要の場合もあります。

 

たくさん摂れと言われても、、、取りすぎはよくないのでは?

と感じる方もいらっしゃると思います。

タンパク質摂取量の上限ってあるのでしょうか?

 

タンパク質摂取量の上限は?


日本人の食事摂取基準(2020年版)


「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によりますと、「現時点ではたんぱく質の耐容上限量を 設定し得る明確な根拠となる報告は十分ではない」と記載されており、一言で言うと

「わからない」

と言うことです。

十分な根拠はありませんが、それでも現在あるデータから推測して、

「目標量(上限)は1歳以上の全年齢区分において 20% エネルギーと することとした。」

としています。

1日の総摂取エネルギーの20%までにしておきましょうと言うことです。

この表の各枠内の右側の数字が概ね20%に該当します。

身体活動レベル別になっており、I=身体活動レベルが低い, II=普通, III=高い です。

出典:日本人の食事摂取基準(2020年版)

 

レビュー論文(2006)


あるレビュー論文( Int J Sport Nutr Exerc Metab.2006;16(2):129-152)によりますと、身体的必要性、体重管理、タンパク質毒性回避に基づいて算出した最大タンパク質摂取量は、

・約2〜2.5 g/kg/日 

・摂取エネルギーの約25%

としています。

 

過剰なタンパク摂取は、

・消化管が食事性タンパク質からアミノ酸を吸収できる速度(1.3〜10 g / h)

・タンパク質を脱アミノ化して尿素を生成し、過剰な窒素を排出する肝臓の能力

を超えてしまい、高アミノ酸血症、高アンモニア血症、高インスリン血症、吐き気、下痢、死(ウサギ飢餓症候群)などを起こしうるとしています。

この論文では摂取エネルギーの35%を超えるとこのような症状が出現しうると推定しています。

 

レビュー論文(2016)


こちらのレビュー論文(Food Funct. 2016;7(3):1251-1265.)では、

・2g/kg体重/日の長期摂取は安全

・3.5g/kg体重/日が許容上限

・2g/kg体重/日を超える慢性的な摂取は避けるべき

としています。

 

運動やあるいは病気により体力を消耗しているような時は一時的に〜3.5g/kg体重/日のタンパク質を摂取することは許容できるけれども、漫然と2g/kg体重/日を超えるタンパク摂取を継続することは好ましくないと言うことです。

 

タンパク質 4.4g/kg体重/日!!


2014年に行われた研究( J Int Soc Sports Nutr. 2014;11:19.)では、20人の男女(男性11人、女性9人、25.2±6.3歳、身長170.0±8.9cm、体重71.8±12.2kg、週に平均8.5±3.3時間ほどの筋トレをしている人たち)が8週間、4.4g/kg体重/日のタンパク質を摂取しました。平均307±69g/日です苦笑。すごい。

しかしながら、顕著な健康上のトラブルは生じませんでした。また体脂肪も増加しませんでした。

意外と大丈夫のようです。ただし、8週間という短期間です。長期投与の安全性は??です。

 

 

まとめ


現時点ではたんぱく質摂取量の上限を 設定し得る明確な根拠となる報告はありません。

既存の情報から推測しますと、

日常的に摂取するタンパク質の量としては、

・2 g/kg/日  (体重50kgなら100g/日)

・摂取エネルギーの20〜25%

くらいにまで止めておくことが無難そうです。

 

運動やあるいは病気により体力を消耗しているような時は一時的に

〜3.5g/kg体重/日  (体重50kgなら〜175g/日)

のタンパク質を摂取することは許容できますが、漫然と継続することは推奨できません。

特殊なケースでは、

〜4.4g/kg体重/日  (体重50kgなら〜220g/日)

も可能かもしれませんが、積極的にはお勧めしません。

 

たくさん摂れと言われても、2 g/kg/日を超えるほどのタンパク質を摂取することは結構大変だと思いますので、現実的には日常的に上限を超え続けることはあまりなさそうですし、あまり意識しないでも良いような気がします。

 

ただし、腎臓の機能が低下している人は過剰摂取により病状が悪化することがございますので必ず主治医と相談してください。

 

【参考文献】

・「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html

・Bilsborough S, Mann N. A review of issues of dietary protein intake in humans. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2006;16(2):129-152. doi:10.1123/ijsnem.16.2.129

・Wu G. Dietary protein intake and human health. Food Funct. 2016;7(3):1251-1265. doi:10.1039/c5fo01530h

・Antonio J, Peacock CA, Ellerbroek A, Fromhoff B, Silver T. The effects of consuming a high protein diet (4.4 g/kg/d) on body composition in resistance-trained individuals. J Int Soc Sports Nutr. 2014;11:19. Published 2014 May 12. doi:10.1186/1550-2783-11-19

 

 

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