スマートウォッチや携帯心電計で標準12誘導心電図類似の記録
スマートウォッチの心電図機能は基本的には「不整脈」の評価が目的です。
しかし、不整脈ではない心電図異常が捉えられないか?と思うわけです。
つまり、波の形をもう少し詳しく評価出来ないか、という問題に関して色々試したりしています。
スマートウォッチで標準12誘導心電図に類似した波形の記録を試みたり、
携帯心電計でも同様に試してみたり。
そんな中、興味深い論文が出ました。
スマートウォッチの心電図記録による心筋梗塞の診断精度
JAMA Cardiologyというメジャーな医学雑誌についに出ました。
スマートウォッチの心電図記録による心筋梗塞の診断精度に関する論文です。
Multichannel Electrocardiograms Obtained by a Smartwatch for the Diagnosis of ST-Segment Changes.
JAMA Cardiol. 2020 Aug 31:e203994.
スマートウォッチは、Apple Watch Series4を使用。
Apple Watch Series 5(GPS + Cellularモデル)- 40mmスペースグレイアルミニウムケースとブラックスポーツバンド – S/M & M/L
対象者は100人(平均年齢61歳、男性67%)で、ST上昇型心筋梗塞54人、非ST上昇型心筋梗塞27人、健常者19人。標準12誘導心電図とApple watchを使った9誘導心電図を記録しその診断精度を調べました。
結果、
・正常心電図:感度84%、特異度100%
・ST上昇型心筋梗塞:感度93%、特異度95%
・非ST上昇型心筋梗塞:感度94%、特異度92%
とかなり精度が高いものでした。
記録の仕方はこの写真を参考にしてください。9つの波形を記録します。
Apple Watchによる心電図波形情報をどう活かすか?
急性心筋梗塞は、「標準12誘導心電図」により「ST」の変化を捉えて診断することが多いです。かつ、早期診断がとても重要で1分の遅れが生死を分けることも少なくありません。
「標準12誘導心電図」を記録できない時にスマートウォッチを使うことで早期診断につながれば大きなインパクトとなります。
残念ながら、心電図の知識がない一般の方は記録された心電図波形をみてもそれを評価することはおそらく出来ません。
しかしながら、記録した波形を素早くオンライン診療で提示することが可能であれば非常に役立つ可能性はあります。
また、訪問診療や訪問看護といった在宅医療の場で役立つことは十分あるでしょう。
急性心筋梗塞は、典型的には胸の真ん中あたりが締め付けられるような痛みが生じる形で発症します。
そのような胸痛が生じた場合は我慢せず(分単位のうちに)救急車を要請することが原則です。
Apple watchをいじっている暇があったら救急車を呼びましょう、ということになります。
しかし何らかの理由で救急要請出来なかったり、あるいは救急車を要請して待機している最中に記録しておくと役立つかもしれません。
ただし、2020年9月27日現在ではApple Watchによる心電図記録は日本ではできません。
綺麗な心電図波形を記録したい方は、三栄の携帯心電計CheckmeECGはお勧めです。
ここまで書いて、以前同じような記事を書いていたことに気付きました笑。
まあ、良いか笑。こちらも参考にしてください。
【参考文献】
Spaccarotella CAM, Polimeni A, Migliarino S, Principe E, Curcio A, Mongiardo A, Sorrentino S, De Rosa S, Indolfi C. Multichannel Electrocardiograms Obtained by a Smartwatch for the Diagnosis of ST-Segment Changes. JAMA Cardiol. 2020 Aug 31:e203994. doi: 10.1001/jamacardio.2020.3994. Epub ahead of print. PMID: 32865545; PMCID: PMC7466842.