せっかく接種するワクチンの効果を最大化するためには

投稿日: カテゴリー: 医療一般


新型コロナウイルス感染症対策の柱として現時点で考えられているのは「ワクチン」です。ワクチンの感染予防、発症予防、重症化予防は十分期待でき、そして最近は後遺症予防の効果に関する研究も発表されています。
デルタ株等の変異の出現もありワクチンだけでは解決しない可能性はあり引き続き手指消毒や三密回避、不織布マスクなどの対策も合わせて行う必要がありそうですが、それでもコロナ対策としてはワクチンはなくてはならないものと認識されています。

ワクチンの効果を最大限にするためには、接種の前後で十分な睡眠を取ることが重要ということは以前お話しました。



今回は、「運動」がワクチンの効果を高めるという話をしたいと思います。

定期的な運動習慣が抗体反応を高める


定期的な運動習慣が抗体反応をはじめとして免疫反応が活発であるとする報告は複数あります。例えば、


・若いエリートアスリートは、年齢をマッチさせた対照群に比べて、インフルエンザワクチン接種後にT細胞と中和抗体がより顕著に増加していた(Brain Behav. Immun. 2020;83:135–145. )


・中国の高齢女性(65歳以上)において、ワクチン接種後の数週間に活発に歩いた群(18,509歩/日以上)は、活動的でない群(10,927歩/日未満)よりも優れた免疫学的反応(末梢血中の単球と形質細胞の拡大、18カ月後の抗体増加)を示した(J. Am. Geriatr. Soc. 2009;57:2183–2191. )。


・運動のトレーニングを17年以上受けた高齢者は、年齢をマッチさせたトレーニングを受けていない人に比べて、インフルエンザワクチン接種に対する抗体反応が高かった(Age (Omaha) 2015;37(6) )。



それでは、普段運動習慣はないのだけれど、ワクチンを打つ直前に運動すればワクチン効果増強するのでしょうか?



急性の運動負荷はワクチンの効果を高めるのか?


急性の運動介入(すなわち、1回の運動)がワクチン反応に及ぼす影響は議論があります。


ワクチンの効果を高めるとする報告もあります。

・若年成人を対象とした研究では、ワクチン接種前に精神的な課題や運動(ピーク出力の約80%まで負荷を増加させた4分間のサイクリングを4回実施)による急性ストレスを与えると、対照条件と比較して、より強い抗体反応が誘発された(ただし統計的有意なのは女性のみ)(Brain Behav. Immun. 2006;20:159–168. )。
先日、こちらのブログでも触れました。
 → https://clinic.zenplace.co.jp/3557/


・インフルエンザワクチン接種の6時間前に、利き腕ではない腕の三角筋と上腕二頭筋をエキセントリックに収縮させると、男性では細胞介在性反応(INF-γの反応増強)が改善し、女性では抗体反応が増加した(Brain Behav. Immun. 2007;21:209–217. )


・55-75歳の健康人を対象とした研究では、インフルエンザワクチン接種前に中程度の持久力運動を40分間行ったところ、女性のみワクチンの免疫増強効果を認めた。(Med. Sci. Sports Exerc. 2014;46:455–461. )





一方で、急性の運動は免疫反応増強に効果的でないとする報告もあります。


・高齢者(平均年齢73歳)を対象とした研究では、インフルエンザワクチン接種前の45分間の中程度のレジスタンス運動は、急性期のワクチン反応を低下させ、6ヶ月間の追跡調査では抗体価やインフルエンザ発症に影響を与えなかった。(Brain, Behav. Immun. – Heal. 2020;1:100009. )


・若年群(平均22歳)、高齢群(平均57歳)いずれも、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種前に低~中強度の持久力運動(最大心拍数の55~65%で40~45分)を行っても、免疫増強効果は見られなかった。(Brain Behav. Immun. 2012;26:680–687.)




ということで、ワクチン接種前の急性の運動負荷の効果は明確ではありません。女性においては、ワクチンの効果を高めることが期待できるかもしれません。


運動はなぜワクチン効果を高めうるのか?


一つは、運動によりカテコラミンを介したNK細胞とウイルス特異的T細胞の血液と組織間の再分配が促され、免疫監視機能が高まります。

また、運動によりIL-7やIL-15などの筋肉由来のサイトカイン(マイオカイン)が定期的に放出され、有益な効果を及ぼしていると考えられています。例えば胸腺に働きかけT細胞を産生する能力を高めたりします。


今日から運動を始めましょう


定期的な運動習慣はワクチンの効果を高める可能性が高そうです。
ワクチン接種直前の急性な運動負荷の効果は不明ですが、女性ではワクチンの効果を高める可能性はありそうです。

上記でご紹介した研究は全て新型コロナウイルスワクチンに関するものではありません。新型コロナウイルスワクチンに関しての運動の有用性の研究はおそらくまだないと思います。

それでも、これから新型コロナウイルスワクチンにも応用可能と思いますし、今後接種を予定している人は特に今日から運動習慣を開始、継続し、ワクチン接種に備えてはいかがでしょう。

デルタなどの変異ウイルスは厄介です。強い感染力、急性期の重症化、そして長期に及ぶ後遺症の可能性。

それらのリスクを少しでも軽減するために、今から運動し、そしてワクチン接種に臨みましょう。

まずは散歩だけでも良いと思います。自宅でヨガやピラティスでも良いと思います。ラジオ体操でも良いでしょう。できることを、できる範囲で、まず始めてみてはいかがでしょう。始めることが大切です。

布施おすすめのオンラインピラティスはこちら。

Youtube
https://www.youtube.com/hashtag/zenplace


そうそう、睡眠も7-8時間しっかりとることも忘れずに。


【参考文献】
・Valenzuela PL, Simpson RJ, Castillo-García A, Lucia A. Physical activity: A coadjuvant treatment to COVID-19 vaccination? Brain Behav Immun. 2021 May;94:1-3. doi: 10.1016/j.bbi.2021.03.003. Epub 2021 Mar 7. PMID: 33691149; PMCID: PMC7937336

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